遷延性意識障害の治療で音楽が取り入れられている理由とは
病気でこん睡状態となった際に、患者に声をかけて訴えかけるという事が多々あります。
『視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚』の五感と言われるものは、脳の原始的な部分に直結しているため、刺激を受けると脳の活性化が促されます。
特に聴覚は五感の中でも、こん睡状態に陥った際でも最後まで脳が感じ取ると言われています。
そのため、遷延性意識障害の治療やリハビリでも、声掛けや音楽療法を取り入れていることが多くあります。
「おはよう」や「おやすみ」などのあいさつだけでなく、語りかけたりすることもよいとされており、遷延性意識障害患者に患者家族が日常的に声掛けすることは、医学的な完治から推奨されています。
音楽療法では、患者が好きな歌手や音楽ジャンルの曲をかけるというものもあります。
遷延性意識障害患者が意思の疎通ができるまで回復した際に、「体が動かなくて、まぶたも開けられなかったけど、母親や看護師の声が聞こえて、自分の好きなアーティストの曲を流してくれていたのは覚えている。」というケースが多々あるため、人の声や音楽療法に有効性が認められるのは間違いないと言えるでしょう。
聞きなれない音にもチャレンジ
家族による声掛けや音楽療法が有効であるのは理解できたかと思いますが、やってしまいがちなのが『同じ音楽をかけたりと、変化がない』という事です。
もちろん、聞きなれた家族の声や音楽が遷延性意識障害患者にとって心地よいものだと思いますが、聞きなれてしまうと変化に乏しいとも言えます。
ある遷延性意識障害患者のケースでは、家族や医師などの医療関係者からの呼び掛けにはまったく無反応であったが、見舞いに来た10年ぶりにあった従兄弟からの問いかけに反応して、発語するようになったというものがあります。
また別のケースでは、たまたま入院している病院の近くで工事があり、日中はかなりの騒音があったところ、不明瞭ながら「うるさい」とつぶやいたという事があります。
音楽療法では、たまたまラジオから流れた音楽に反応したのだが、患者の好みの音楽からかけ離れていた曲であったため家族が不思議に思っていたが、学生時の体育祭のダンスに使われていた曲で何度もその曲に合わせて練習していたため、反応したというものもあります。
もしできることならば、昔に交流があった親類や友人に来ていただいて声掛けしてもらうのも、遷延性意識障害の患者にとっては良い刺激になると思われます。
また音楽も『初めてのデートで流れていた曲』、『大好きな映画で使われていた音楽』、『好きな芸能人が出ていたCMに使われていた曲』など、患者自身にしかわからないエピソードがある音楽があるかもしれないので、CDだけでなくラジオなどでノンジャンルで音楽を流すようにするとよいかもしれません。
音楽療法を積極的に取り入れている医療機関では、細やかなアドバイスを医療関係者からされたりするのですが、遷延性意識障害患者に対しての理解が浅い医療機関では、反対に音楽療法を行おうとしても、「同室の患者に迷惑なので」などと反対されるケースもあります。
転院する際に音楽療法を取り入れている医療機関を選ぶとよいのですが、情報が無かったり、あったとしても保険会社が別の医療機関を勧めてきたりするケースがあります。
交通事故による遷延性意識障害に精通している弁護士ならば、音楽療法を取り入れている医療機関を複数把握していたり、保険会社に対して診療の自由権利を主張することで転院をスムーズに行えたりするので、弁護士に相談をしてみてもよいと思います。
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3カ月以上入院している患者に対して健康保険が病院に支払う保険点数は激減するので、遷延性意識障害の患者は、入院から2カ月以上経つと、病院側から転院を促される。
予断を許さない症状である急性期ではない遷延性意識障害患者は、入院から3ヶ月程度で転院を促される。症状固定をし、退院した後は、様々な事情から自宅介護を選ぶケースが多い。
遷延性意識障害であっても、医学的にリハビリは有効と考えられており、音楽療法やアロマ療法など様々な種類がある。
遷延性意識障害の意識の回復は、目線や小さな変化により気づくことが多いので、介護人は観察力が必要となる。
遷延性意識障害の治療法には、電気的な刺激を脳に与えるものがあり、脊髄後索電気刺激が代表的なものである。