遷延性意識障害患者の治療で発生する転院問題
救命措置が一段落して症状が安定しても、遷延性意識障害の患者は、自分で動くことも話をすることもできません。
排泄に関しても失禁状態が続くので介護が必要です。
遷延性意識障害になると、「日にちが薬」という言葉とは無縁で、病状が回復する見込みのない状態が続きます。
しかし、3カ月以上入院している患者に対して健康保険が病院に支払う保険点数は激減するので、入院から2カ月以上経つと、病院側から転院について打診があります。
近年は、患者側のコンセンサス(同意)を得ることが不可欠であるという認識が浸透しているので、病院側から一方的に退院してくださいと言われるようなことはありません。
一般的には、次のようなスタッフがチームを作って、患者および患者の家族と話し合いながら、転院について話を進めて行きます。
・退院支援看護師
退院を控える患者と医師チームとの間に立って、両者の意見のすり合わせを行います。
退院して帰宅する場合は、帰宅後に必要な治療について医師の意見を伝えます。
・ソーシャルワーカー
退院する患者および家族の意向を聞いて、退院後に送る生活の質の向上を家族と共に考えます。
患者家族は、転院が可能な病院のリストのうち、希望の医療機関の見学を予約するなどして転院に備えます。
遷延性意識障害患者は自分の意思を言葉で伝えることができないので、患者と近しい家族が転院について手配するのが望ましいです。
どのような病院が転院先にふさわしいか?
遷延性意識障害の患者は自力で動くことができないので、完全看護をしてくれる病院でなければ、家族の介護が不可欠になります。
完全看護とは名ばかりで、レベルの低い看護を行っているようでは患者の健康状態が悪化してしまうので、転院する前に病院を見学して、治療体制に信頼が置けるところをえらびましょう。
遷延性意識障害患者が転院するのにふさわしいのは、服薬管理や血圧および体温測定、入浴、洗髪、爪切り、などの基本的な看護はもちろんですが、以下のような条件を満たしている医療機関です。
・褥瘡(じょくそう:床ずれ)を予防するための体位変換
数時間ごとに体位を変換しなければ血行が悪くなり褥瘡を発症しやすくなります。
看護師が定期的に病室を訪れて体位を変えるだけでなく、褥瘡になりやすい臀部やかかとなどについては、衣服や靴下を脱がせて素肌の状態を毎日確認することが求められます。
・排尿、排便の始末と水分量の出入りが適切かどうかの確認
バルーン(尿を入れるパック)を装着したままにしていると陰部に挿入したカテーテルから感染症を起こしやすいので、衛生的な管理が求められます。
点滴による栄養補給をしている場合は、尿量のチェックと摂取した水分の量を記録して、水分の吸収と排泄が適切に行われているかどうかの確認をします。
水分の補給と比較して排尿が少なければ、腎臓や心臓の機能の低下が疑われます。
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交通事故で頭部を強打して意識不明になり、遷延性意識障害となる可能性が高い人は救命救急センターに搬送されて治療を受けるが、安定期に入って3カ月経つと転院を促される。
交通事故で遷延性意識障害となっても、個室の利用料を加害者側に支払わせるのは難しいと言える。
遷延性意識障害患者が長期入院するには、医療制度から難しい面があるが、長期入院を実施している医療療養型病院もわずかながらにある。
遷延性意識障害の治療法には、電気的な刺激を脳に与えるものがあり、脊髄後索電気刺激が代表的なものである。
交通事故に遭い遷延性意識障害となった場合、遷延性意識障害患者は健常者と比べて感染症に罹患する確率が高いため、自宅介護する場合には介護者が日頃から十分に観察とケアをする必要がある。