遷延性意識障害の具体的な治療法とは?
交通事故で遷延性意識障害となった場合、打撲や骨折、脳や内臓へのダメージがあれば、そちらを優先して治療が施されます。
肉体的なダメージの治療がひと段落したところで、遷延性意識障害の治療がされます。
とはいえ、遷延性意識障害の確実な治療方法は確立されておらず、もっぱら外的な刺激による意識の回復を中心に行われます。
遷延性意識障害は脳死とは違い、生命維持に必要な脳幹などにはダメージがなく、意識や記憶を司る大脳部分に障害があることを指すため、もし何らかの方法でこれらの障害を取り除いたり、停止している大脳の機能を動かすことができれば、遷延性意識障害から回復します。
そのため、「見る・聞く・嗅ぐ・味わう・触れる」の五感を通じて脳を刺激して、大脳機能を回復する治療法がとられます。
ですので、日常的なケアでも「足や腕をストレッチする」「患者が好きだった音楽をかける」「いつも見ていたテレビ番組を流す」「好物だったスイーツの香りを嗅がせたり、のどに詰まらせないように少しだけ含ませたりする」「無言でお世話するのではなく、一つ一つ声をかけながら世話をする」「朝になったらカーテンを開けて太陽の光を浴びさせる」などを積極的に取り入れて行います。
遷延性意識障害の医療的な治療法
交通事故等で遷延性意識障害となられた家族の中には、日常の刺激に加えて積極的な医学的治療を選択される方もいます。
脊髄後索電気刺激は、心臓のペースメーカーのような器具を首の後ろの皮膚の下に埋め込み、頸椎に電気的な刺激を与える治療する方法です。
頸椎には神経の束である脊髄が通っており、電気的な刺激を脊髄を伝って脳に送り、大脳を活性化させるのが目的です。
しかし、治療の有効割合は約53%で、患者が若ければ若いほど有効度が上がりますが、全症例で有効なわけではありません。
また、手術代も保険が効かないため百万単位の費用が必要になり、手術後も薬代やメンテナンス等でさらに費用がかさみます。
さらに手術を行っている医療機関は極めて少ないため、遠方に住んでいる遷延性意識障害の患者の場合、移送させる手段が必要となります。
脊髄後索電気刺激以外にも電気刺激系の治療法がいくつかありますが、すべての患者に対して有効ではないのが現実です。
他には、東洋医学からのアプローチで、鍼灸治療をされる方もいます。
東洋医学では、人間の神経は「経絡」によってつながっており、「経穴」を刺激することで様々な効用があると考えられています。
経穴は一般的にはツボと言われていて、「肩こりには親指と人差し指の付け根の間のツボを押すと良い」と、身体的な異常がある別の個所のツボを刺激するケースもあり、遷延性意識障害では脊髄以外にも手足や耳のツボを刺激することもあります。
これらの治療方法は、交通事故で遷延性意識障害となって症状が安定してすぐに始めた方が良い物から、交通事故後6か月が経ってからと言うものまで様々ですので、医師と相談の上行うと良いでしょう。
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3カ月以上入院している患者に対して健康保険が病院に支払う保険点数は激減するので、遷延性意識障害の患者は、入院から2カ月以上経つと、病院側から転院を促される。
聴覚は五感の中で最後まで遷延性意識障害患者が認識できる器官と言われているため、音楽や声などを患者に聞かせることにより、脳を刺激して活発化させると考えられている。
遷延性意識障害であっても、医学的にリハビリは有効と考えられており、音楽療法やアロマ療法など様々な種類がある。
遷延性意識障害の患者に対してのマッサージの有用性は、医学的にも認められているため、介護者は「さする」マッサージを中心に行うことが良い。
交通事故に遭い遷延性意識障害となった場合、遷延性意識障害患者は健常者と比べて感染症に罹患する確率が高いため、自宅介護する場合には介護者が日頃から十分に観察とケアをする必要がある。