脊髄損傷の種類「完全損傷」と「不完全損傷」について
脊髄損傷には、完全損傷と不完全損傷があります。
完全損傷と不完全損傷は、脊髄の損傷の程度やどこを損傷したかによって分類が行われますが、受傷した直後の急性期には診断がむずかしいとされています。
完全損傷とは、脊髄が離断した状態です。
脊髄の中を通っている中枢神経が分断されたため、神経の伝達経路が絶たれて、損傷した部位より下位の機能が麻痺します。
すなわち、脊髄の上位部分を損傷した場合は、下位部分を損傷した時と比べて、麻痺が広範囲に及び、さまざまな症状が現れます。
脊髄損傷では、背骨の上の方を傷めるとより重傷だと言われるのは、損傷した部分より下へは脳が出した指令が届かず、損傷した部分の感覚情報を脳に伝えることもできないからです。
たとえば、第8頚髄を損傷した場合は指を曲げることができるが、第6頚髄を損傷した場合は手首をそらすことができます。
脊髄の損傷した箇所によって、可動域と可能な動作が大きく異なるので、患者さんの動作を観察することは、損傷した脊髄の場所の特定に役立ちます。
仙髄の完全損傷になると、仙髄機能を喪失して、肛門周囲の知覚を失うため、肛門括約筋の収縮が不可能になり、排便傷害を発症します。
不完全損傷は、脊髄の一部が損傷または圧迫などを受けたが、横断的な損傷は受けていないため、一部の機能が残っています。
たとえば、仙髄を損傷しても仙髄機能は残っているので、肛門括約筋を任意に収縮できる、または肛門周囲の知覚がある状態を維持します。
受傷部位以下に感覚が残ることがある
完全損傷では、脊髄の受傷した部位から下は神経経路を遮断されるため感覚を失うとされていますが、実際には受傷した箇所より下に感覚が残ることがあります。
しかし、感覚といっても正常なものではなく、しびれや痛みなどの異常な知覚であることが多く、被害者の生活を苦しめる原因となります。
これらの知覚異常は、医師の観察による正しいリハビリにより、ある程度緩和できる可能性があります。
また、脊髄損傷で第6胸髄より上の髄節を損傷すると、自律神経にも影響を及ぼします。
自律神経は、脈拍や体温、発汗など、身体の恒常性を維持するために24時間休みなしに働いている神経です。
脊髄損傷で自律神経にも影響が出ると、血圧が上昇する、冷や汗をかく、排尿・排便のコントロールがむずかしい、脈が遅くなるなどの症状が現れます。
交通事故により完全損傷や不完全損傷の脊髄損傷となった場合には、示談交渉で問題が起きやすいだけでなく治療による問題も起こりやすいため、まずは弁護士へご相談ください。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
交通事故の後日に脊髄損傷が判明しても、交通事故との因果関係の証明が難しいケースもあるため、弁護士に相談をした方が良い。
保険会社が事故による脊髄損傷と認めないケースには、事故が軽微であったり、症状の発症が遅いことがあげられる。保険会社に認めさせるには、弁護士に相談をした方が良い。
脊髄損傷の入院期間は、国が定めた規則により例外と認められない限り6カ月を超えると入院基本料の15%が自己負担になるため、ほとんどの人が6カ月以内に退院する。
交通事故で脊髄損傷を負った場合、症状固定の時期が問題となる事が多いが、症状固定の時期は医師に、保険会社との交渉は弁護士に任せるとよい。
交通事故の脊髄損傷の治療で、保険適用外の治療費は加害者や加害者の保険会社が認めることはほとんどないため、事前に保険会社に確認をしてからの方が良い。