脊髄損傷で移動が困難となった場合に請求できるものとは
交通事故で脊髄損傷を負った場合、一番多く現れる後遺障害は足の麻痺です。
脊髄損傷の後遺症は、脊髄が損傷した個所によって症状が大きく違うのですが、脊髄の神経の性質上『腰よりも下が麻痺』といった、一定の身体個所より下全体が麻痺することが多いため、総じて足の麻痺の後遺症が出やすいのです。
そのため、脊髄損傷の後遺症による麻痺が起こった場合、歩行が困難となる事が多いです。
この歩行困難も障害の度合いが人によって違い、『走るのは難しいが、歩行は可能』・『杖などの歩行補助道具があれば歩行は可能』・『自力で車いすでの移動が可能』・『全身麻痺で車いすに座ることが難しく、車いすの操作もできない』と、幅広くあります。
しかし、交通事故以前と比べて歩行が困難となったことへの違和感は、ほとんどの方が抱きます。
特に、杖や車いすがなければ移動が出来なくなった場合には、不便さをより一層感じやすいです。
「今まで通勤に使っていた駅は、バリアフリーじゃないので車いすでは利用できない。」、「バスのステップの段差が大きくて、麻痺した足が上がらないので、バスを使うのを辞めた。」と、大幅に移動が制限されるのが現状です。
将来的な移動手段を考える
交通事故で脊髄損傷の後遺症を負った場合、加害者側から後遺障害慰謝料や逸失利益などが示談時に支払われます。
後遺障害慰謝料は『後遺障害が残ったことに対する慰謝料』、逸失利益は『後遺障害により失った利益(減額した給与や収入)』ですので、請求し忘れることはほとんどないのですが、『移動手段に対する費用』というのはややもすると忘れがちになります。
『移動手段に対する費用』というとざっくりとした言い方になりますが、杖や車いすの購入費用のほかに、福祉車両の購入費用、民間救急車・介護タクシーの費用も含まれます。
杖や車いすはリハビリを終えた段階で、病院の勧めで購入されることが多いでしょうが、これらの購入費用も請求することができます。
また、杖や車いすは耐用年数があるため、定期的な買い替えが必要になりますが、将来的な購入費用も併せて請求することができます。
外出する際に、交通手段が発達している都心部ならばある程度バリアフリーに対応していますが、交通手段が発達していない地域や後遺障害が重く公共交通機関の利用が難しい場合には、民間救急車や介護タクシーを利用したり、自家用で福祉車両の購入をするという選択肢も必要になります。
示談前のタクシー料金などに関しては保険会社が認めているものであれば支払ってもらえるのですが、示談後に必要な物に関しては基本的には支払われません。
しかし、重度の脊髄損傷で転院時に民間救急車の費用が不可欠といった場合には、請求することもできます。
福祉車両の購入に関しては、後遺障害の内容や程度に応じ、被害者の移動の手段として必要かつ相当な限度で認められています。
ただ、加害者側は支払いを認めない事が多いので、交通事故に精通した弁護士に相談の上請求するとよいでしょう。
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交通事故で脊髄損傷となった患者が車いすを用いて室内移動をするのは困難であるケースがあるため、外出用とは別の移動手段を考慮する必要がある。
保険会社が事故による脊髄損傷と認めないケースには、事故が軽微であったり、症状の発症が遅いことがあげられる。保険会社に認めさせるには、弁護士に相談をした方が良い。
脊髄損傷で歩行困難の症状が出た際に、後遺障害について被害者の年齢が問題となることがあるので、被害者が高齢者になるほど弁護士に事前に相談をした方が良い。
脊髄損傷は損傷の程度により、足先の痺れや、下半身麻痺であったりと症状にばらつきがある。交通事故による怪我が原因で生活が困難になった場合、リフォーム費用を加害者側に請求できる可能性がある。
脊髄損傷と一口にいっても、必ず上位の後遺障害等級に当てはまるとは限らない。当該症状に応じ、認定される等級は異なり、等級が高いほど慰謝料の額にも関わる。