脊髄損傷となり排泄障害という後遺症がでた場合には
脊髄損傷を受傷すると、腕や足などに麻痺がおこります。
脊髄損傷患者が身近にいない健常者だと、どうしても四肢の麻痺が一番に思いつきますが、実際には四肢だけでなく、胸や腹部など他の場所にも麻痺がおこります。
外見からは分かりにくい脊髄損傷の麻痺のひとつに、内肛門括約筋や外尿道括約筋などの麻痺があります。
括約筋とはリング状の筋肉で、縮んだり緩んだりしてバルブのような役割を果たしており、分かりやすい所では瞳孔も括約筋で、暗所では緩み明るい場所では縮まって目に入る光の量を調整しています。
内肛門括約筋や外尿道括約筋は、肛門と尿道の開け閉めにかかわる括約筋で、通常ならば便意や尿意を感じると、大脳から脊髄を通って括約筋に『筋肉を弛緩させて便や尿を排出しろ』と命令をして排泄を行います。
しかし、脊髄損傷の場合は命令の通路である脊髄が切断されているため、便意や尿意が脳に伝わらなかったり、反対に脳から内肛門括約筋や外尿道括約筋に伸縮の命令が伝わらなかったりすることがあります。
そのため、括約筋が弛緩して起こる便失禁・尿失禁や、反対の便秘や排尿障害が起こったりします。
排泄障害とは一生の付き合いに
脊髄損傷による排泄障害は、腰より下に麻痺が出ている場合には、程度の差はあっても必ずと言っていいほど症状が出ます。
また、麻痺の症状が出ていなくても、脊髄損傷部分がピンポイントで便意の伝達や括約筋の命令伝達部分であった場合、排泄障害のみの症状が出ます。
「交通事故に遭ってから便秘がひどくなった。」、「以前から少しあった尿失禁の症状が悪化した。」という場合、脊髄損傷の可能性があります。
特に交通事故の被害者が中高年以上の場合は、自身の加齢の問題と見過ごしがちになりますが、このような症状が出ている場合には、交通事故で入通院している病院で診察・検査を受けるようにした方が良いでしょう。
脊髄損傷による排泄障害は、脊髄損傷の根本的な治療方法がないため、一生の付き合いとなります。
排泄障害の対処方法は、便秘薬や食事の内容でトイレのタイミングをコントロールしたり、おむつや尿漏れパットを利用したりする方法のほかにも、カテーテルで尿を排出したり、吸入器を利用したり、手術をして膀胱瘻での排尿など、さまざまな方法があります。
どの方法であっても、一生排尿障害のケアが必要となってきますので、交通事故で示談する際には、費用面を含めて検討をする必要があります。
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脊髄損傷の損害賠償請求の示談は交通事故から3年が時効とされているが、後遺症がある場合には、症状固定日から3年が時効となる。
脊髄損傷の症状は、完全麻痺やしびれなどが代表的なものではあるが、痛みや温冷を感じなくなるなどの感覚異常や、排尿や排便が困難になるなどの様々な症状がある。
脊髄損傷の症状は四肢の麻痺が代表的なものであるが、一見して脊髄損傷によるものとは分からない症状もあるため注意が必要である。
交通事故による脊髄損傷のなかで不完全損傷の場合は注意が必要である。後遺障害等級が認められない可能性がある。弁護士のサポートがあってこそ、訴訟を避けられ、適切な対応ができる。
保険会社が事故による脊髄損傷と認めないケースには、事故が軽微であったり、症状の発症が遅いことがあげられる。保険会社に認めさせるには、弁護士に相談をした方が良い。