交通事故の被害者が死亡した場合、逸失利益などの返金は?
【質問】
2年前に主人が交通事故で遷延性意識障害となり、弁護士に依頼して加害者側の保険会社と何度も示談交渉を重ねて、自宅介護を前提とした損害賠償金を受け取りました。
受け取った損害賠償金の中には、主人がもらうはずだった給料分の逸失利益や、自宅の改装費、将来的な介護費用なども含まれているため、かなりまとまった金額になります。
示談が済んでから、自宅介護のために自宅を改装しようと思っていた矢先に、入院先で夫の容体が急変して亡くなってしまいました。
そのため、自宅の改装は必要がなくなり、手元には夫の介護のために使うはずだった損害賠償金が多額に残りました。
この場合、逸失利益や使わなかった介護費用・自宅改装費用は保険会社に返金しなければいけないのでしょうか?
【回答】
交通事故における示談は、「損害賠償金を支払うので、交通事故の示談以降、当事者は事故に対して、責任の追及や金銭の請求をしない」という意味でされます。
そのため、保険会社が作成する示談書には、先程の文言が入れられています。
つまり示談以降は、加害者被害者双方ともに、示談時とは大きく状況が変わったとしても、金銭の追加要求はできませんし、反対に金銭の返還を求めることはできません。
もし、示談後も金銭の要求等が出来るのであれば、それは示談ではなく単なる合意にしかほかなりません。
質問者の場合も、示談後に被害者の方が死亡されて、逸失利益や介護費用などが示談時の状況と比べて過剰金額となったとしても、保険会社に返還しなければいけない義務はありません。
その理屈が通るのならば、質問者の夫が示談時に試算した寿命よりも長く生存をした場合には、保険会社は介護費用などを追加して支払わなければいけないことになり、保険会社としても現実的な主張ではないため、保険会社が返金を求めてくる可能性は皆無と言えます。
しかし、治療費などを定期金賠償で受け取っている場合には要注意です。
定期金賠償とは、毎年(もしくは毎月)その年(月)に決められた金額を支払うという保険金の支払い方法なのですが、治療費や介護費は交通事故の被害者のために使われるべき金銭ですので、被害者の死亡をもって定期金賠償は終了となることがほとんどです。
そのため、定期金賠償の支払い対象である被害者が亡くなった際には、速やかに保険会社に連絡をする必要があります。
死亡以降も定期金賠償での保険金を受け取った場合には、もちろん保険会社に返金しなければいけませんし、故意に死亡したことを告げなければ詐欺として訴えられる可能性もあるため、手続きは速やかにした方が良いでしょう。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
交通事故の示談を加害者と直接した場合には、保険会社から保険金が支払われなくなるため、直接の示談はしない方がいい。
交通事故の示談を他人に任せることはできるが、様々な問題が発生する可能性があるため、法律と示談のプロである弁護士に示談を任せる方がいい。
交通事故以前から障害があり、交通事故で悪化した場合には、以前からの障害を考慮して差し引いた保険金が支払われるが、完治していた場合には純粋に交通事故で負った怪我として扱われる。
自動車に無償で同乗する好意同乗であっても、近年では好意同乗を理由に同乗者への減額はされない傾向が高い。
交通事故の場合、被害者が保険会社に対して、損害賠償金額の証明をしなければ、保険会社から損害賠償金が支払われない。