交通事故の怪我が被害者の過失で悪化した場合の補償は?
【質問】
私の不注意により、自動車で男性をはねてしまいました。
男性は足の骨を折る大怪我で、交通事故直後に、加入していた保険会社に連絡をして、治療費等は保険会社から直接病院へ支払ってもらうようにしていました。
交通事故当初は入院1カ月、完治まで2カ月ほどの治療で済む程度の骨折だと保険会社から聞かされていました。
しかし、交通事故から3カ月して保険会社から聞いたところ、男性の怪我はまだ治っておらず、別の病院に転院になるとのことでした。
びっくりして骨折が悪化したのかと尋ねたところ、実は男性の素行があまり良くなく、入院中も病院を抜け出して、お酒を飲みに行ったり、勝手に外泊したりと問題のある患者であったそうです。
しかも、外出中に転倒をして骨折を悪化させてしまい、今回の転院も病院側が素行不良から強制退院を言いだして、急いで転院先の病院を探して転院したそうです。
そのため、示談交渉も進んでおらず、何より、本人の不節制のせいで骨折を悪化させたのに、その分の治療費まで支払わせていることに納得いきません。
このような被害者自身の過失で交通事故の怪我などが悪化した場合も、加害者側が治療費を支払わなければいけないのでしょうか?
【回答】
交通事故で加害者が負わなければいけないのは、「交通事故で与えた被害のみ」です。
つまり、交通事故以後、交通事故の怪我に起因しない怪我や病気に関しては、損害賠償責任はありません。
今回のケースでは、最初の診断で入院1カ月の全治2カ月とされていますので、被害者が病院指導の治療を受け、療養に専念していた場合には2カ月で完治していたと考えられます。
そのため、医師に「男性が治療に専念していたら2カ月で完治していた」との診断がもらえた場合には、2カ月までの治療費や休業補償などについては加害者側の責任となりますが、それ以降の負担は加害者の自己負担になります。
判例でも、入院中に医師や看護師などの注意を聞かず、勝手に包帯や点滴などを外し、病状を悪化させた被害者に対し、50%の支払いを減じた判決を出したものや、さらに踏み込んで「詐欺行為を行うために悪意を持って交通事故の怪我を悪化させ、さらに加害者に金銭の要求をするのは悪質である」と損害賠償請求の80%を減じたものもあります。
このように交通事故で怪我を負った者であっても、誠実に対応しなければ裁判所も認めないということですので、加害者という立場であっても過度の要求にこたえる必要はありません。
今回は幸いなことに保険会社の仲立ちがありますので、被害者との対応は保険会社に任せ、間違っても被害者と直接会ったり、治療費の支払いなどについて口約束をしたりしないようにしましょう。
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交通事故で入院した場合、医師から治療の必要性により指示があるなどでないと、個室利用料を加害者に対して請求することはできない。
交通事故の被害者からの過剰な要求は、加害者と言えども要求に応じる必要はないため、保険会社が介入しているのならば、保険会社に対応してもらうと良い。
加害者の持病が原因で起こった交通事故の場合でも、加害者に責任能力を問うことができる可能性が非常に高く、損害賠償請求もできる可能性が高い。
交通事故で加害者から見舞金を受け取る場合には、メリット、デメリットを考慮し、損害賠償金に含めるかどうかをハッキリさせたうえで受け取るようにすべきである。
交通事故の過失割合とは、交通事故での責任の割合を表したもので、その割合に応じて、交通事故による損害の負担をしなければいけない。