むち打ちでは健康保険で治療した方が良い場合もある?
交通事故に遭った際に、自分は任意の自動車保険に加入していても、相手は加入していないということが往々にしてあります。
日本の自動車保険の加入率は約70%で、3台に1台は加入していない計算になります。
さらに詳しく見ると、沖縄県や鳥取県などは加入率が約50%で、普通自動車よりも軽自動車の方が加入率は低いとの統計が出ています。
つまり、交通事故に巻き込まれてむち打ちになっても、使える保険は相手の自賠責保険だけというケースも多々あることになります。
むち打ちの治療を受ける際に、「交通事故のむち打ちなんだから、全額加害者が治療費を支払ってくれる」と思い、そのまま実費を支払うと後で大損となることがあります。
自動車保険に加入していないドライバーの多くは、リスクマネージメントが出来ていないか、金銭的な理由からなので、実際に事故になった場合、治療費の不払いが多く見られます。
その際には自賠責保険頼りとなるのですが、自賠責保険は人身事故の治療費等の上限が120万円ですので、それ以下に治療費を押さえられるかがポイントとなってきます。
健康保険を使うことで、手元に残る金銭が多くなることも
具体的に言うと、交通事故であっても「第三者行為による傷病届」の手続きをすれば、交通事故によるむち打ちの治療であっても3割負担で済みます。
「実費を支払おうが、3割負担だろうが、最終的には自賠責保険から戻ってくるので、むち打ちの治療費が120万円を超えなければ同じなのでは?」という疑問が出てくるかもしれませんが、自賠責保険の120万円は治療費だけでなく、休業損害や通院慰謝料を含めた額になるので、治療費だけで120万円の枠を使い切ってしまうと、休業損害や通院慰謝料がもらえなくなります。
一例を記載すると
2カ月間のむち打ち治療で、治療費100万円、通院した日数20日、通院のため会社を休んだ日数20日(月収から割り出した日給1万円)とした場合、自賠責保険に請求できるのは、
治療費 100万円
通院慰謝料4,200円×20×2=16万8千円
休業損害1万円×20=20万円
(自賠責保険では休業損害の日額は5,700円ですが、証明を出すことにより1万9千円まで認められます)
の合計136万8千円なのですが、上限が120万円なので120万円しか支払われないことになります。
そのうちの治療費である100万円は病院に支払っているのですから、手元に実際に残るのは20万円となります。
しかし、健康保険を利用して3割負担で済んでいれば、
治療費 30万円
通院慰謝料4,200円×20×2=16万8千円
休業損害1万円×20=20万円
の合計668,000円が支払われ、治療費の30万円引いた36万8千円が手元に残ることになります。
つまり、加害者から直接治療費などの回収が難しいと予想される場合には、積極的に健康保険を利用した方が良いです。
ここでもう一つ、「健康保険組合が負担した7割分はどうなるのか?」という疑問が出てくるかと思いますが、健康保険が負担した分は加害者に対して健康保険組合が直接請求するため、加害者が被害者の健康保険にタダ乗りすることはできません。
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交通事故のむち打ちの症状固定をした後も通院を続けた方が、後遺障害認定の時に認定されやすくなったり、示談交渉で有利となることもある。
むち打ちの症状が長引く原因としては、筋肉組織の重傷、骨の損傷・神経組織の損傷などが考えられるので、MRIを主体とした精密検査をする必要がある。
軽度の交通事故であっても『警察に交通事故を通報。むち打ちの症状が出たら即病院に行き、医師の指示に従い通院を続ける。』という事をしないと、加害者に治療費などを請求できなくなる。
むち打ちは、自分の健康保険を使って治療することができる。特に、被害者の過失割合が大きい場合は、健康保険による治療により、受け取る保険金が増えることがある。
むち打ちによって発生する損害は治療費だけではないので、治療が終わったら加害者の支払いは終わりではなく、その他の損害賠償金について話し合うべきである。