むち打ちの治療で健康保険を使った方が良いケースもある?
出会いがしらの衝突事故でむち打ちになりました。
優先道路を走っていたのは私の車で、交通事故の原因が加害者にあることは明らかなのですが、私も安全運転義務違反がありました。
被害者の過失が大きい場合は、健康保険を使った治療の方が、保険会社の立て替え払いを利用するよりも、受け取る保険金の額が多くなる可能性があります。
交通事故被害者の怪我に対する治療は、本人の健康保険を使わず、医療費の実費を保険会社が支払うのが一般的ですが、健康保険を使った治療も可能です。
むろん、自分のお金で怪我を治療するより、保険会社の立て替え払いの方が良いと思う人が多いでしょう。
しかし場合によっては、立て替え払いでなく、被害者の健康保険を使って治療費の1割から3割を自分で払って治療した方が、結果的により多くの保険金を受け取ることができるケースがあるのです。
自分の健康保険を使った治療を検討すべきケースとは?
被害者の過失割合が多い交通事故の場合は、自分の健康保険を使って治療した方が損害賠償請求で受け取るお金が増える可能性があります。
その理由は、支払った治療費と損害賠償金のバランスです。
保険会社の立て替え払いを利用してむち打ちの治療をした結果、合計200万円の治療費をかけてむち打ちが完治したとします。
その後、損害賠償金500万円で和解が成立しました。
交通事故の過失割合は、加害者対被害者が60:40です。
損害賠償金は、過失の割合に応じて支払われます。
過失がゼロなら、被害者は損害賠償金の全額を受け取りますが、過失が4割あれば、受け取れるのは損害賠償金の6割です。
被害者に支払われるべき損害賠償金は、確定した損害賠償金500万円の6割=300万円ですが、保険会社はすでに治療費200万円を払っているので、300万円―200万円=100万円となり、受け取ることができる損害賠償金は100万円です。
保険会社の立て替え払い制度を利用してむち打ちを治療すると、全額負担になるので治療費がかさみます。
一方、日本における健康保険制度は、健康保険が適用できる治療は自己負担の上限が3割なので、立て替え払いを利用する時に比べて、医療費はずっと少なくなります。
交通事故の過失割合の多い被害者がむち打ちの治療をする場合は、ご自分の健康保険を利用することを検討しましょう。
治療費の請求について悩んでいる方、または過失割合について不満がある場合は、弁護士にご相談ください。
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むち打ちを完治まで治療を続けると治療費が増えるので、治療を終えるまでは損害賠償請求ができない。そのため、完治するまで治療を続けるか、後遺障害の認定申請を検討するべきか、医師と相談する方が良い。
交通事故でむち打ちとなったと後から主張しても交通事故との因果関係を認められない可能性があるため、自覚症状がなくとも、交通事故直後は病院に行くべきである。
交通事故によりむち打ちとなった場合、むち打ちが完治するまで治療を続けると治療費が増えるので、治療を終えるまでは損害賠償請求ができない。
交通事故によるむち打ちが原因でうつ病を発症した場合、むち打ちの重症性や治療期間が重視されるため、原因であるむち打ちの医学的な根拠がなければ、うつ病の発症原因と認められる可能性は低い。
保険会社は交通事故によるむち打ちの治療は認めても、継続治療は認められにくいといった特徴があるため、完治するまではむち打ち患者側も対応策をとる必要がある。