他覚所見なしのむち打ちとはどんなもの?
むち打ちの診断において、大きな要素となるのが他覚所見があるかないかです。
交通事故の被害者本人が「むち打ちで首が痛い」と思うのが自覚症状(自覚所見)で、医師がMRIなどの画像で「むち打ちの症状の原因がある」と判断するのが医学的他覚所見です。
以前は、「交通事故に遭った場合には、むち打ちになったと言っておけばいい」という考えが、まかり通っていました。
その当時はMRIやCTなどの医療機器がなかったり、精度が低かったりしたため、患者がむち打ちで痛みがあると訴えれば、むち打ちを否定する証拠がないので、医師もその治療をしざるを得ない状況があったからです。
しかし、医療技術の向上により、筋肉の断裂や小さな骨の変形などもMRIなどで発見できるようになると、多くのむち打ちに対して医学的所見を診断することができるようになりました。
とはいえ、現在の医療技術でもすべてのむち打ちに対して、医学的他覚所見を発見することはできません。
そのため、交通事故の被害者がむち打ちを訴えても医学的他覚所見がない場合には、本当にMRIなどに映らないむち打ちなのか、被害者が嘘をついているのか判断がつかないため、保険会社としてもおのずと対応が厳しいものになります。
医学的他覚所見がないと不利
交通事故の損害賠償請求についても、医学的他覚所見がない場合にはやはり不利になります。
交通事故直後にむち打ち症状が出て入院した場合、医学的他覚所見が無いと有る場合に比べて、補償金額が減額されます。
裁判の判例でも、医学的所見が無い場合には、医学的所見がある場合の2/3ほどの金額になる事が多いです。
また、通院をしていて保険会社が治療費の打ち切りを言ってきても、医学的所見がある場合には強固に反論できますが、自覚症状のみであると打ち切られてしまうこともあります。
一番大きな違いがうまれるのが、後遺障害認定です。
MRIやCT画像などでむち打ちの原因となる部分が映っており、医師のむち打ちの診断書がある場合には、12級の認定を受けることが多いです。
しかし、医学的所見のない自覚症状のみのむち打ちである場合には、一番下の14級の認定すらもされないことがあります。
むち打ちで後遺障害認定が受けられなかったという方の多くが、医学的他覚所見が無かったことが原因です。
一方で、医学的他覚所見が無くても後遺障害認定を受けられた方は、むち打ちの自覚症状や生活をする上での不便を事細かに書類に記載し、「MRIやCTなどでは発見できないが、総合的に見てむち打ちの後遺症がある」との医師の診断書が出されていることが多いです。
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むち打ちを後遺障害として認定してもらいたい場合は、故意に症状を誇張していると思われないように、画像診断や検査結果などの客観的な証拠を用意すると良い。
むち打ちを簡単に後遺障害認定してもらうことは難しいが、積極的に通院して、事故の直後と最近の画像診断を用意するなどすれば、後遺障害を認められる可能性が高くなる。
むち打ちの検査は、レントゲンやCTなどの画像診断のほかに、筋萎縮テストなどの神経検査や脳波検査がある。むち打ちが長引くようであれば、画像検査のほかの検査を受けるとよい。
むち打ちで後遺障害認定を受けるのは意外に難しく、治療期間や通院期間の他に、医師の所見が重要となるため、日ごろの医師との付き合い方が重要となる。
医学的な画像診断が得られないむち打ちの場合、神経学的検査が行われることもあるが、絶対的な検査方法ではない。