死亡事故で適正な金額の示談金を受け取るためには
なんの過失もない家族が交通死亡事故に遭った場合、加害者に対する憤りや家族を失った悲しみが抑えられず、「お金なんていらないから、家族を返して!」とおっしゃられる遺族が多くいらっしゃいます。
大切な家族を亡くされたのですから、遺族の言葉はもっともなのですが、加害者側からすれば謝罪をするとともに、損害賠償金(示談金)を遺族に支払うしか償う方法がないのも事実です。
死亡事故の示談においては、加害者側が主導する傾向があります。
2019年度の自動車保険の加入率は約78%、自動車共済の加入率は約11%なので、約88%の自動車が自賠責保険以外の任意の自動車保険・共済に加入していることになります。
つまり、単純計算で死亡事故が起きた場合、90%近くは保険会社が示談に介入してきます。
死亡事故の被害者が自動車保険に加入していた場合は、被害者側にも保険会社が介入してくれるため、被害者遺族が直接加害者と示談する機会は少ないのですが、『自動車保険に加入していない』、『自動車対歩行者の死亡事故で、歩行者側なので自動車保険に加入しているのに関係ない』、『自動車対自動車の死亡事故であるが、被害者側の過失が0である』といった場合には、相手の自動車保険会社と遺族が示談交渉を行うため、相手の保険会社の主導で示談金や示談内容を決められて、そのまま示談を終えてしまうことがほとんどです。
示談金の適正金額は?
では、示談金の適正な金額とはいくらになるのでしょうか?
死亡事故の場合、被害者側に過失がなければ数千万円の示談金額が提示されるため、感覚的に高額と感じてしまいますが、判例からするとそうではないことが多いです。
死亡事故の示談金の内訳は、『逸失利益』・『被害者の死亡慰謝料』・『遺族に対する死亡慰謝料』が大きな柱になります。
逸失利益とは、死亡事故の被害者が生きていた場合の収入に対するものですので、仮に死亡事故の被害者が40歳で年収500万円であったのならば、67歳まで働けたとして500万円×27年=1億3500万円が逸失利益の総額になります。
この中から、被害者が生きていた場合に被害者のために使われた生活費を差し引く、『生活費控除』がされるのと、一括で払った場合に複利計算で運用されると計算するライプニッツ係数がかけられるため、実際には6000万円~8000万円ほどになります。
(家族構成などで生活費控除の割合が変わるため)
死亡事故の慰謝料は、自賠責基準で被害者に対しては350万円で、家族に対しては550万円~950万円になります。
判例では、2000万円~2800万円です。
(家族構成・扶養家族の有無によって変わる)
単純計算で一番低い示談金額でも6350万円なのですが、保険会社から提示される金額は、3000万円ほどということがあります。
これは自賠責保険から支払われる上限が3000万円であり、3000万円を超える分に関しては保険会社が上乗せ分として支払わなければならないため、いわゆる「払い渋り」をするからです。
そのため、死亡事故の示談に詳しくない遺族が、裁判をすれば1億円以上の示談金を受け取れるにもかかわらず、3000万円ほどで示談をしてしまうことが往々にしてあります。
死亡事故の示談をする際には、必ず弁護士に示談金額が適正なものか確認してもらうようにしましょう。
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死亡事故の示談交渉の時に弁護士費用特約は必ず利用できるとは限らず、死亡事故のように保険金が高額の場合には弁護士費用が弁護士費用特約で賄いきれないこともある。
交通死亡事故で相手側の損害保険会社と交渉する場合、冷静さを保ち話し合う必要があるが、それが無理だと感じたら弁護士に依頼をした方が良い。
加害者が補償内容の充実している保険に加入していないと、死亡事故の被害者遺族が弁護士に依頼しても、十分な損害賠償金が支払われないことがある。
家族が死亡事故に遭った場合は、いち早く弁護士に相談するのが望ましい。大切な人を死亡事故で亡くしたなかで冷静に判断するのは難しいものの、弁護士選びは慎重に行わないとならない。
死亡事故の慰謝料は自賠責・保険会社・弁護士基準によって計算される金額が大きく変わるため、加害者側から提示された示談金額が低い場合には、弁護士に相談して内容を精査してもらうとよい。