遷延性意識障害となった場合、家族が就業していたら?
交通事故で家族が遷延性意識障害となった場合、介護をどうするかが大きな問題となってきますが、その中で同時に家族の就業問題が出てくることがあります。
例えば、サラリーマンの夫、パートの妻、大学生の娘、高校生の息子がおり、妻が交通事故で遷延性意識障害となったとします。
その際、介護の中心となるのは夫か娘であることが多いのですが、夫には仕事があり、娘も大学に通わなければ卒業が危ぶまれます。
もし、祖父母が遷延性意識障害となった場合には、通常の高齢者介護問題と同じく子である夫やその妻が介護にあたることがほとんどなのですが、よくある話として「親の介護が大変だから、妻はパートを辞めて介護に専念しろ。」と夫が言ってきて揉めるというケースがあります。
就業をあきらめない選択も
遷延性意識障害患者の障害は重度に当たるため、自宅介護であれば常時介護が必要ですし、病院や医療施設で介護をしてもらう場合でも、家族の介護が必要な場合があります。
そのため、『家族の誰かがつきっきりで介護しなければならない。』との考え方が主流なのですが、家族が全員就業していたりした場合は、『誰が仕事を辞めるのか?』、『辞めたことで収入が減るが、それはどうするのか?』という問題が発生し家族間でもめることが多く、ヤングケアラーと言われる18歳未満の子供が遷延性意識障害患者の介護するケースもあります。
しかし、遷延性意識障害患者家族の中には、自身が就業しつつも患者の介護を続けている人もいます。
1つ目は、自宅で仕事をして、介護と仕事を両立させているケースです。
とはいえ、自宅で出来る仕事は範囲が狭い上に、収入が低いケースもあり、なかなか難しいと言えます。
2つ目は、介護サービスを使って患者家族の就業時間中はヘルパーなどに介護を依頼するケースです。
家族の就業中は介護の専門職が介護にあたるため家族も安心できますし、ケースによっては家族の買い物や外出時にも介護を頼めるため、患者家族が自由にできる時間を作りやすいという利点があります。
欠点としては、行政的な支援を受けていても費用が掛かる事が多く、家族1人の収入よりも介護費用が上回る場合、経費的に悩みどころとなる事です。
交通事故により遷延性意識障害となった場合には、加害者側に介護費用の請求をすることができます。
この介護費用というのは、ホームヘルパーや看護師といった職業介護士だけでなく、親や子・孫など遷延性意識障害患者家族が介護した場合にも請求できるため、『介護のために退職した』という場合にでもある程度の補填が出来るので、経済的な負担が軽減できます。
介護費用に関しては、判例基準で家族の介護であれば8,000円/日、職業介護士であれば15,000~20,000円/日になります。
職業介護士については1日のうちの数時間だけの利用といった場合には、実費で計算がなされます。
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遷延性意識障害は基本的に介護が必要となる。職業介護人を雇う、あるいはご家族が介護をするにしても、加害者側へ介護費用を請求できるため、弁護士を雇い、相手の保険会社と交渉してもらうのが望ましい。
遷延性意識障害患者を自宅介護する場合には、おむつ以外にも衛生管理用品が必要となり、費用が負担となる事がある。弁護士に示談を頼んでおけば、そういった費用も含めて請求をしてもらえる。
交通事故により負った遷延性意識障害の示談をする場合、将来的な介護も考えて交渉しなければいけないので、弁護士に相談をして示談交渉を進めるとよい。
遷延性意識障害の患者を自宅で家族が介護する場合、家族による介護費用の補償がされることがあるが、絶対的なものではないため、示談前に弁護士に相談をするほうが良い。
交通事故の示談交渉で保険会社から遷延性意識障害患者の余命は10年ほどとの主張がなされる時があるが、裁判所は平均余命を採用している。