交通事故で遷延性意識障害となった場合の示談の進め方とは
家族が交通事故で遷延性意識障害となった場合、「これから先の介護はどうすれば?」、「収入が途絶えてしまい、金銭的にどうすればよいのか?」と、いきなりたくさんの問題に直面するため、患者家族は考える暇もなく問題解決のために奔走することを余儀なくされます。
そのため、加害者側の保険会社との話は後回しとなり、示談も症状固定してからになるので、「示談をし始めたのは、交通事故から2年たってから。」というケースも珍しくありません。
このように、交通事故から時間が経過してからの示談の場合、脊髄損傷患者の方はある程度落ち着いている反面、金銭的な困窮や精神的な疲弊があり、相手側の示談内容にそのまま応じてしまう事があります。
反対に交通事故から半年ほどと、日が浅いうちに示談をしてしまうと、示談をしてしまってから、「治療にこんな費用も掛かるなんて知らなかった。請求し損ねた。」ということが多々あります。
弁護士に、「示談した後に、不当であったことが分かった。取り消したいけれどもどうすれば?」と相談されることもありますが、示談後に取り消すことは非常に困難であります。
弁護士と示談方針を決める
最近では「交通事故の示談は弁護士に相談」というのが浸透しつつありますが、死亡事故よりもさらに相談の必要性があるのが、被害者が遷延性意識障害となっている場合です。
遷延性意識障害の場合、将来的な介護が必要になりますが、平均余命が80歳と言われる現在では、50歳で交通事故により遷延性意識障害となられたとしても、30年間の介護が必要となり、20代・30代で遷延性意識障害となられたケースでは、『現在介護をしている親が亡くなった後の介護はどうするか?』といった問題が多くみられます。
そのため、示談をする時には将来的な介護を継続して行えるように、加害者側に示談金を請求することが重要となってきます。
先ほどに述べた被害者の寿命以外にも、自宅介護にするか病院での療養にするかでも将来的な治療費が変わってきますし、自宅での介護を選択した場合は介護のためのリフォーム費用も請求対象となります。
また、介護用品の購入費用や転院の際に必要な特殊医療タクシー費用など、『必要となった時に初めてどれだけ費用が掛かるか知る』といったものもあります。
『遷延性意識障害の示談は交通事故に詳しい弁護士に相談』をお勧めするのは、一般人はあまり知らない・経験がない介護の事情を知っているため、遷延性意識障害患者や家族が本当に必要な介護にかかる費用を余すことなく示談で請求するからです。
「弁護士に相談する前に、示談交渉を始めてしまった。」という場合でも、示談内容や示談金額の精査を弁護士に頼むことができるので、まずは相談をしましょう。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
18歳~64歳の遷延性意識障害患者は、介護保険等の公的な支援が受けられず、手当てが少なくなるため、加害者側に十分な介護費用を請求する必要性がある。
遷延性意識障害の示談金は数千万円になる事が多いが、保険会社が提示する金額は判例よりもかなり低いため、示談前に示談内容を弁護士に確認してもらうとよい。
家計の中心である人が遷延性意識障害となると、患者家族の生活費がなくなり困窮することがある。そのような場合には仮渡金の請求を加害者側にするとよい。
交通事故で遷延性意識障害になった場合、保険会社は遷延性意識障害患者の余命を平均余命より短く計算して賠償金額を計算するので争点になりやすい。
遷延性意識障害の患者を自宅で家族が介護する場合、家族による介護費用の補償がされることがあるが、絶対的なものではないため、示談前に弁護士に相談をするほうが良い。