遷延性意識障害の患者の長期入院は可能なのか?
遷延性意識障害の患者家族が抱える問題で、一番大きなものは転院問題と言えます。
3カ月間入院をすると、病院から退院もしくは転院を言われます。
現在の医療制度では入院から3カ月が経過すると、同じ治療をしていても請求できる金額が大幅に減るため、病院の経理から見ると「儲からない患者」となってしまうからです。
さらに、遷延性意識障害の患者の場合、除痰や食事などの日ごろのケアに加えて、常時のモニタリングが必要となる場合もあり、看護師や医師の負担が大きくなりがちになるため、遷延性意識障害患者の受け入れを拒否する病院もあります。
また、病院自体が遷延性意識障害患者の受け入れ体制や、医療設備が整っていないということもあります。
そのため、遷延性意識障害の患者家族が「4カ月以上の長期入院できる病院はないのか?」と探されることが多いのですが、暗礁に乗り上げることが多いです。
中には、遷延性意識障害の治療に特化した病院で、遷延性意識障害患者の長期入院を受け付けているところもありますが、全国的に見ても20院に満たないのではないかと思われます。
長期入院ができても壁が
長期入院できる病院に入院できたとしても、患者が亡くなるまで永続的に入院できるとは限りません。
中には、1年や3年が限度であったり、遷延性意識障害の症状が少しでも改善できれば退院というところもあるでしょう。
遷延性意識障害が回復して、発語やちょっとした指の動きなどで意思疎通できるが、全身麻痺の症状が残る元遷延性意識障害患者の場合には、患者家族からすれば入院が必要な状態には変わりがないのに、退院を余儀なくされることもあります。
そのため、患者家族が長期入院を望まれても、今の医療制度ではかなり難しいと言えます。
長期入院が可能な医療療養型病院が見つかっても、「ベッドに空きがない」「自宅から病院が離れすぎていて、病院に運ぶのも、入院後に見舞いに行くのも難しい」「毎月20万円近い入院費を払い続けられない」といった壁にぶつかることもあります。
しかし、自宅介護を続けての介護疲れから、介護者が共倒れとなってしまうことは、患者自身は望んでいないと思います。
「長期入院先が全くなくてどうしよう?」と日々過ごすよりも、「少し遠いけれども、長期入院できる病院は、○○病院と××病院があるから、なにかの時にはお願いしてみよう」とお守り代わりに情報を知っているのとでは、介護のモチベーションが変わってくると思います。
医療療養型病院の情報のために、遷延性意識障害患者の家族会など情報交流ができるところに、積極的に参加してもいいかもしれません。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
自動車事故対策機構(NASVA)は、遷延性意識障害などの交通事故被害者の援護をする独立行政法人で、療養センターの入所や介護料の支給などの支援をしている。
遷延性意識障害患者の中には、人工呼吸器が必要となる人もいる。人工呼吸器が必要な遷延性意識障害患者の自宅介護は、かなり重篤なレベルとなるので、それを踏まえて家族は検討する必要がある。
遷延性意識障害であっても、医学的にリハビリは有効と考えられており、音楽療法やアロマ療法など様々な種類がある。
3カ月以上入院している患者に対して健康保険が病院に支払う保険点数は激減するので、遷延性意識障害の患者は、入院から2カ月以上経つと、病院側から転院を促される。
予断を許さない症状である急性期ではない遷延性意識障害患者は、入院から3ヶ月程度で転院を促される。症状固定をし、退院した後は、様々な事情から自宅介護を選ぶケースが多い。