遷延性意識障害患者の生活費控除は適切とは限らない?
交通事故で遷延性意識障害患者となった場合、保険会社との争点の一つとなるのが生活費控除です。
交通死亡事故で一家の家計を支えている夫が亡くなった場合、年収のすべてが逸失利益として認められません。
どういう事かというと、給料のうち亡くなった本人の食費や携帯電話代・衣服費・電気代などもろもろの分が生活費控除として引かれるからです。
つまり、交通死亡事故の遺族には、亡くなった被害者の生活費を除いた分が、今後生活していく分の生活費として保険会社から支払われます。
収入の主である夫の場合は30~40%、女性全般が30~40%、独身男性が50%の生活控除がされることが多いです。
年収500万円の夫の生活費控除が30%と裁判で判決が下りた場合は、年350万円が遺族の逸失利益として計算されることになります。
遷延性意識障害で生活費控除が問題になる訳
ではなぜ、交通事故で遷延性意識障害となった時に、生活費控除が保険会社との争点になるかというと、保険会社は「遷延性意識障害で寝たきりになっているので、生活費はほとんどかからない」と、時として死亡事故並みの生活費控除を言ってくるからです。
遷延性意識障害の患者家族からすると、支払われる保険金が少なくなることも問題ですが、患者の事を間接的に否定されたように受け止めてしまい、心が傷つくこともしばしばです。
実際、遷延性意識障害の患者を自宅介護した場合に、生活費が30%も大幅に減るかというとそうでもありません。
今までは必要がなかった紙おむつや清拭紙の購入や、人によってはエアコンをめったに使わなかったのに室温管理による体温管理をしなければいけないので、365日24時間エアコンを使うようになり電気代が高額になる事もあります。
そのため、一律に遷延性意識障害患者家族の生活費が下がるとはいえず、中には交通事故前よりも出費が増える可能性もあります。
裁判所の判例を見ても、生活費控除を全く認めなかったもの、通常よりも減額して認めたもの、保険会社の主張通りの生活費控除の割合を認めたものと様々にあり、個人ごとの病状や家族の生活環境により大幅に変わることが分かります。
しかし、裁判所は被害者救済に重きを置いた判決を出すことの方が多いため、遷延性意識障害の家族に有利な判決が出ることの方が多いです。
遷延性意識障害患者の家族は、この先何年何十年と患者と共に生活していかなければいけないこともあるため、保険会社との示談前に交通事故に詳しい弁護士に相談をして、適正な保険金を受け取るようにしましょう。
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交通事故で遷延性意識障害となった場合、被害者と被害者の看護をする家族の補償を優先した示談がなされるべきなので、身内からの示談交渉への干渉がひどい場合には弁護士に依頼するとよい。
遷延性意識障害は交通事故を原因とする傷病の中でも、損害賠償の金額が極めて高額になりやすい。その点、保険会社と争点になる事も珍しくないため、弁護士を雇うことを視野にいれるべきである。
遷延性意識障害の保険金の算出の際には、余命と生活費控除が争点となる事が多く、保険会社の主張は被害者に対して圧倒的な不利となる事が多い。
18歳~64歳の遷延性意識障害患者は、介護保険等の公的な支援が受けられず、手当てが少なくなるため、加害者側に十分な介護費用を請求する必要性がある。
交通事故の遷延性意識障害の示談の場合、示談のタイミングが難しいのと示談金額の交渉が難しいため、弁護士に任せた方が良い。