不完全脊髄損傷により起こる上半身麻痺について
脊髄損傷を受傷すると、圧倒的に下半身に麻痺などの障害が起こる確率が高いです。
脊髄は脳の信号が通る大きな道路で、身体の各臓器の付近で枝分かれしていくイメージです。
そのため、腰で脊髄損傷が起きれば腰から下、胸で脊髄損傷が起きれば胸から下に麻痺が起こるのですが、まれに下半身ではなく上半身麻痺が起こることがあります。
脊髄は1本の大きな神経と思われがちですが、実際には複数の神経束が集まってできています。
わかりやすく例えると、「たくさん車線があって、1番目の車線は痛みや温度などの感覚、2番目の車線は筋肉の収縮などの運動面、3番目の車線は身体の調子を整える自律神経、4番目は…」と、それぞれの神経伝達が別々にあるが1つの大きな道になっています。
完全脊髄損傷の場合、これらの車線がすべてストップしている状態なので、脊髄損傷が起きている個所より下に麻痺が起こります。
一方で不完全脊髄損傷の場合、複数ある車線のうち一部がストップしている、もしくは通りが悪くなっている状態なので、「足は普通に動かせるのだけど、痛みは感じない。」といったことが起こります。
上半身に異常があれば脊髄損傷も疑う
通常、脊髄損傷個所から下に障害があらわれるのですが、先述した不完全脊髄損傷のケースで、「上半身の神経経路のみ損傷」という場合には、上半身麻痺や感覚不全が起こります。
CTやMRIで脊髄損傷個所がある事が確認されている場合には、「上半身麻痺が起きているのは、脊髄損傷が原因」と診断できるのですが、損傷個所がCTやMRIに映らないほど微小であったり、撮影されにくい個所の場合、見過ごされてしまうケースがあります。
その場合、「患者は肩や腕に麻痺があると訴えているが、CTやMRIでは肩や腕回りの異常がない。脊髄損傷ならば足に麻痺が出るはずだから、足に異常がないから別のことが原因だろう。」と医師ですらそのように診断してしまうことがあります。
このような場合には、交通事故の示談で大いに不利になってしまいます。
同じように上半身麻痺により腕に麻痺がある状態でも、「原因不明の麻痺がある」と「脊髄損傷による麻痺がある」とでは、後遺障害と認められる確率が大きく変わってくるからです。
腕が全く動かないほどの麻痺であれば、医師も原因究明のために精密検査をするかもしれませんが、動かしづらい程度の麻痺であれば、「交通事故に遭ったのならば、その程度の後遺症は気にするほどでもない。」、「年齢から考えると加齢からの麻痺も考えられる。」、「そもそも麻痺なんてないのに、大げさに言っているのでは?」と、加害者のみならず医師もそのように言うケースがあります。
交通事故の被害者からすれば、「嘘なんて言ってないし、交通事故から腕に麻痺が起きているのに、誰も信じてくれない。」と悔しい思いをすることが多いです。
通院している病院での診断に納得いかない場合には、精密検査を依頼する、セカンドオピニオンや通院先を変えるなどの方法があるので、交通事故に詳しい弁護士に相談をするとよいでしょう。
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脊髄損傷では麻痺がある部分に痛みやかゆみなどを感じる幻肢痛という症状が出ることが多くあるため、幻肢痛で日常生活に支障が出る場合にはその分を含めた損害賠償請求をした方が良い。
脊髄損傷の診断は麻痺、しびれの確認、MRI等の画像診断で特定し、損傷箇所は、C・T・L・Sで部分を、番号で骨の場所を表す。ダメージの度合いは完全損傷と不完全損傷に分かれる。
交通事故の後日に脊髄損傷が判明しても、交通事故との因果関係の証明が難しいケースもあるため、弁護士に相談をした方が良い。
脊髄損傷でセカンドオピニオンを受ける大きなメリットは、精度の高い診断を受けられる点である。
脊髄損傷を負ったからといって必ず後遺障害が出るとは限らない、しかし、不完全脊髄損傷の場合、後遺障害が出ても損傷個所がMRIなどで見つからないケースもあるので、専門病院で検査を受けるとよい。