加害者が認知症の交通事故。保険金は支払われる?
【質問】
会社の同僚と道を歩きながら話していると、暴走してきた自動車に突然はねられ、私も同僚も救急車で病院に搬送されました。
ふたりとも全治2カ月の大怪我で、今は同じ病院に入院中です。
私たちを自動車ではねた加害者は76歳の高齢の女性で、認知症の疑いがあるとのことです。
加害者の車は同居している加害者の息子の名義で、一応自動車保険には加入しているようですが、相手は認知症の高齢の女性なので、保険金がちゃんと支払われるかすごく不安です。
一緒に入院している同僚も、「前に認知症の男性が踏切で列車にひかれて死んだせいで、ダイヤが乱れて被害が出たって鉄道会社が遺族を訴えたけど、裁判で負けたってニュースをしてたから、もしかしたら支払ってもらえないかもな」と言いだし、さらに不安になっています。
加害者が認知症であったという理由で、交通事故の保険金が支払われないということはあるのでしょうか?
【回答】
高年齢化の影響で、交通事故を起こす高齢者の数が増えてきています。
高齢者ドライバーは、「判断能力が衰える」「視力が悪くなり、視界も狭まる」「とっさのときに体力がなく行動が起こせない」といったリスクを抱えています。
さらに、ドライバー自身が認知症と自覚せずに運転をしているケースもあり、何かしらの法的な規制がなければ、高齢者の交通事故は増える一方と考えられます。
加害者が認知症の交通事故の場合でも、保険会社は被害者救済の観点から通常の交通事故の場合と変わらず補償してくれるため、実質的な損害はないと言えます。
そのため質問者も、加害者側の保険会社が連絡してきているので、入院治療費などは問題なく支払われます。
しかし、加害者側はそうはいきません。
過失割合が10の加害者であっても、人身傷害特約保険なら治療費などが支払われるのですが、保険会社によっては認知症を理由に、保険金の支払いを拒否する可能性があるからです。
道路交通法では飲酒運転を禁じていますが、そのほかにも体調が悪い時や睡眠不足などで正常な運転ができない場合にも運転を禁じています。
認知症は認知能力が衰えている、つまり走行中に状況を把握しながら安全に運転することができないので、道路交通法に違反していると考える保険会社もあるのです。
また、認知症を理由に交通事故の刑事責任を免れることができるわけではなく、懲役などの実刑もあり得ますし、加害者の息子も監督責任に問われる可能性があります。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
交通事故で加害者から見舞金を受け取る場合には、メリット、デメリットを考慮し、損害賠償金に含めるかどうかをハッキリさせたうえで受け取るようにすべきである。
生活保護者の死亡事故の場合は無職として扱われるため、逸失利益が認められないが、交通事故がなければ再就職していた可能性が高い場合には、逸失利益が認められることもある。
交通事故で入院している期間の休業補償は、会社の休日(土曜や日曜など)は除外されて計算される。しかし、有給を使って休んだ分に関しては休業補償の対象となる。
交通事故で入院した場合、医師から治療の必要性により指示があるなどでないと、個室利用料を加害者に対して請求することはできない。
交通事故の示談を他人に任せることはできるが、様々な問題が発生する可能性があるため、法律と示談のプロである弁護士に示談を任せる方がいい。