交通事故の後に別の交通事故に遭い死亡。保険金の請求は?
【質問】
1年ほど前に、主人が交通事故で下半身麻痺となりました。
車いすの生活を余儀なくされましたが、車いすで散歩に行ったり、自分一人で近くのコンビニに買い物に行ったりと前向きに生活してくれていました。
そのため、加害者側の保険会社と示談交渉を始めて、夫とともに保険会社と保険金について話し合いをしていました。
しかし、その矢先に夫がコンビニに行く途中で、自動車にはねられ即死しました。
わずか1年ほどで2度も交通事故に遭い死亡するなんて、信じられない気持ちでいっぱいです。
1回目の交通事故の保険会社には夫が死亡したことを告げて、保険金の交渉を一旦ストップしてもらっています。
2回目の交通事故の保険会社からは、死亡事故から2週間ということからか、まだ連絡がありません。
このような場合、二つの保険会社にはどのように保険金の交渉をして行けばよいのでしょうか?
【回答】
交通事故の被害者が示談前に、別の交通事故や病死・自殺などで死亡した場合、しばしば保険会社と被害者家族が保険金のことで揉め、裁判になることがあります。
保険会社によって見解が違いますが、ここでは最高裁の判決に則った解説をしていきます。
1回目の交通事故の保険会社をA、2回目の交通事故の保険会社をBとします。
給料などの逸失利益はA・Bともに通常の交通事故と同じ計算となります。
Aは被害者が示談前に死亡したからと言って、逸失利益を減算することはできません。
BはAが逸失利益として支払う分以外を、死亡の逸失利益として支払うことになります。
分かりやすく説明すると、被害者の寿命までの稼ぎが将来的に1億円であったとします。
Aの事故の後遺症により70%の逸失利益である場合には、Aは7000万円を支払います。
残りの3000万円は、被害者自身が後遺症を持ちながらも働いて稼ぐ予定であったのに、Bの交通事故によりフイになったので、Bは3000万円を支払うという計算になります。
しかし、介護費に関しては死亡によりAが支払期間の短縮をすると、判決がでています。
介護費は被害者の平均余命が大きく関係しており、仮に1年の介護費が200万円で平均余命が30年であれば6000万円が介護費として認められます。
ですが、交通事故後1年で亡くなった場合には、Aは200万円を被害者遺族に支払えばよいと言うことになります。
また、Bに対してもらえなかった介護費の5800万円を請求することはできません。
このようなケースでは2つの保険会社に同時に保険金交渉を行わなければいけないため、弁護士に依頼することを強くお勧めします。
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交通事故の交渉で、「示談」「調停」「裁判」の違いは、示談は当事者同士の話し合い、調停は話し合いの場に裁判所の調停委員が立ち会う、裁判は文字通り裁判で内容を決めることを言う。
損害賠償金に関してはもともと非課税との考え方であるため、交通事故の逸失利益の計算には、 税金が引かれる前の額面の収入が用いられる。
軽傷であった交通事故の示談では、弁護士に依頼することで入通院慰謝料を弁護士基準まで引き上げて増額できる可能性がある。費用の詳細はケースバイケースで弁護料は弁護士によるので比較検討が必要となる。
保険会社は約款に従って賠償金を支払うため、個人で裁判所基準の賠償金を要求しても応えてもらえない。交通事故の示談段階でも、裁判を起こすにしても、賠償金額を増やすには弁護士へ依頼すると良い。
交通事故以前から障害があり、交通事故で悪化した場合には、以前からの障害を考慮して差し引いた保険金が支払われるが、完治していた場合には純粋に交通事故で負った怪我として扱われる。