交通事故によるむち打ちの示談をした後にやり直しはできる?
交通事故によってむち打ちといった神経症を発症している場合、後になって新たな不調があらわれてくるというのは珍しいことではありません。
そこでよく聞かれるのが、「いったん保険会社とむち打ちの示談書を取り交わしたが、その後に新たな症状が出た。これについて慰謝料を請求することは可能か」という質問です。
結論から言えば、いったん示談書を取り交わした後は、再度その件について示談をやり直すことはできません。
示談書には「その他甲乙間に一切の債権債務は存在しないことを確認し合意する」という内容の文章が記載されており、これに署名捺印したら示談は一切終了ということを意味しています。
しかし、どんなにひどい症状が再発していてもむち打ちの示談をやり直すことは不可能なのかというとそうではなく、やり直しができる可能性はわずかですが存在します。
やり直しの条件は下記の3つです。
①示談当時の事情を根底からくつがえすような真実が発覚した
②その新事実が示談当時に分かっていたら、そのような示談書を交わさなかったであろうと思われる
③その新事実に、当該交通事故との因果関係が認められる
交通事故との因果関係の立証は困難
まず①に関しては、後遺障害の対象となるような新たな症状であるケースを指します。
②は、新たな症状が契約内の慰謝料に関係するような重い症状である場合です。
これら2つはクリアしたとしても、難しいのが③の条件です。
交通事故から半年~1年以上の月日が経過していると、新たな症状の原因が交通事故だと証明することはほとんど不可能に近いと言えます。
事故後の生活の中でなんらかの衝撃があった可能性や、糖尿病や高血圧といった疾患の影響であらわれた症状という可能性も存在します。
思い当たる疾患や外傷がなかったとしても、事故との関連を客観的に示し加害者側へ示談に応じてもらうのは、かなり難しくなります。
こうなれば裁判に持ち込むしか方法はなく、弁護士に依頼して示談やり直しのための策を練る必要があります。
いずれにしても医学的な証拠を得ることが最も重要なので、「むち打ちの後遺症だ」と思ったらすぐに、神経症の診断に強い病院で診察を受け、できる限り客観的事実を揃えておくことが肝心です。
予防策として、最初の示談の際に「将来的に当該交通事故が原因で何らかの後遺症が発症した場合、その損害賠償については別途その時に当事者間で協議する」といった一文を加えておくと良いですが、このような対処も専門家が同席でないと難しいでしょう。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
交通事故でのむち打ちの治療費の支払いを保険会社から拒否された場合には、弁護士に依頼して保険会社の主張を反証してもらうのが一番良い。
交通事故により負ったむち打ちを後遺障害と認めてもらうためには、医師の助言のもとに定期的に通院治療をしつつ、怪我と治療に関する記録を残しておくと良い。
交通事故によるむち打ちの治療で整体院に通院していた場合、医師による診断書を発行してもらえず、後遺障害認定がされないことがあり、その状態になると弁護士が介入しても覆すことが難しくなる。
交通事故によって負ったむち打ちの治療中に治療費を打ち切られた場合には、医師に治療の必要性を認めてもらい、弁護士を通じて加害者側と示談するとよい。
むち打ちを負う交通事故に遭った被害者は、弁護士に依頼するタイミングを把握できていない事が多い。状況によって最善のタイミングを見極め、弁護士へ依頼すると良い。