むち打ちとなった場合の、素因減額とはどんなもの?
交通事故でむち打ちを負った際の損害賠償金に対して、素因減額がなされることがあります。
素因減額とは何かというと、「もともと被害者が持っていた因子の分は、損害賠償の金額を減額しましょう」ということです。
例えば、交通事故でむち打ち症状を訴えている患者が、長年裁縫を生業としており、以前から肩痛や腕のしびれで通院をしていたとします。
そうなると保険会社からすれば、「もともと交通事故の被害者は、職業病として肩痛や腕のしびれなどで通院しており、交通事故が原因のむち打ちとは認めがたい」との主張がされます。
被害者からすると保険会社の主張は理不尽に感じるかもしれませんが、素因減額は判例でも、「被害者に生じた損害のすべてを、加害者に負担させることが不公平であり、不当である」と認めるものもあります。
これは、交通事故の被害者は保護されるものではあるが、拡大解釈により以前からの持病や障害・心因的なものを、交通事故の損害賠償請求から排除するという考えになります。
どういった場合に素因減額される?
では、具体的にどういった場合に素因減額されるかを挙げていきます。
1つ目は、交通事故以前から既往症や持病がある場合です。
先述例に挙げたように、以前から肩こりや肩痛・腕のしびれがあり、通院や入院歴がある場合には、素因減額の対象になります。
また、通院や入院歴がなくても、年齢や性別・生活習慣・職業履歴から、「むち打ちに似た症状が、日常的にあったと推測される」といった場合には、素因減額がされる可能性があります。
他にも、生まれつき頸部に障害があったり、頸椎が健常者よりも著しく細かったりなど、少しの衝撃でもむち打ちの症状が出やすいといった場合にも、素因減額が鑑みられることもあります。
2つ目が、心因的に痛みや症状を過大に、むち打ち症患者が訴えていると認められる場合です。
むち打ちの場合は、レントゲンやMRIなどで医療的な見解がない状態のことがほとんどですので、「痛みの原因がないのに、痛みを訴えているのはおかしい」と裁判所が判断することもあります。
特に厄介なのが、むち打ち患者が「加害者憎し」の感情から、自分でも知らず知らずに痛みを過大に表現しており、医師や裁判所からそれを指摘されても認めないといったケースです。
むち打ちの患者があまりにも強弁に出てしまうと、「詐病」や「詐欺」と受け取られかねないため、患者自身も気をつける必要があります。
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自賠責保険の怪我の治療費などの支払い上限は120万円であるため、むち打ちの治療費などが120万円を超えると、保険会社は治療費の打ち切りを言ってくることが多い。
むち打ちの示談金の内訳は、『治療費』・『休業補償』・『通院(入院)慰謝料』が大きなものであるが、慰謝料以外は支払いや補填に使われるため、実際に被害者に残るのは慰謝料のみである。
むち打ちによって発生する損害は治療費だけではないので、治療が終わったら加害者の支払いは終わりではなく、その他の損害賠償金について話し合うべきである。
保険会社は交通事故によるむち打ちは軽微な受傷と考えているため、治療期間が3カ月を超えると、治療費の打ち切りを言ってくる可能性が非常に高い。
交通事故によりむち打ちとなった場合、むち打ちが完治するまで治療を続けると治療費が増えるので、治療を終えるまでは損害賠償請求ができない。