死亡事故の加害者は本当に損害賠償金を払ってくれるの?

日本における交通事故の損害賠償金の最高額は約5億円です(平成23年横浜地裁)。
加害者がこのような高額の損害賠償金を本当に払ってくれるか、死亡事故の被害者遺族は不安を覚えるのではないでしょうか?
結論を申し上げると、加害者が任意自動車保険に加入しており、契約条件で対人無制限になっていれば、被保険者である加害者に支払い義務がある金額を上限なく支払います。
ここで注意すべきは、「加害者に支払い義務がある金額」という点です。
例えば、死亡事故における加害者の損害賠償金額が5000万円という判決が出たとします。
その一方で、被害者と加害者の過失割合は4:6と認定された場合、被害者が請求できる賠償金額は5000万円の6割である3000万円であり、加害者が対人無制限の保険に加入していたとしても、被害者に支払われる保険金は3000万円で、さらにそこから自賠責保険で支払われた保険金額を控除した金額が、実際に支払われる損害賠償金額です。
上記のように損害賠償金がスムーズに支払われるのは、あくまでも交通事故の加害者が任意自動車保険の対人無制限契約に加入していた場合であり、加害者が任意保険に加入していなければ、被害者に対する補償は激変します。
損害賠償金をスムーズに受け取るためには?
端的に申し上げると、自賠責保険で補償される金額を超える損害賠償金の支払いは、全て自己負担となってしまうのです。
自賠責保険では、死亡事故による損害の上限は3000万円と定められています(自動車損害賠償保障法13条に基づく自動車損害賠償保障法施行令2条)。
死亡事故における損害賠償金額が1億円という判決が出た場合に、自賠責保険には加入していたが任意保険未加入だった加害者は、自分で7000万円を支払わなければならないのです。
よほどの富裕者でないかぎり、7000万円をポンとは払えませんから、加害者は損害賠償金の支払いに苦慮することになり、被害者は、いつまでたっても損害賠償金が支払われないことにより苦しみが倍増します。
加害者が任意保険に未加入でありながら、無責任で損害賠償をする意思がない場合や、経済的に困窮していて支払い能力がない場合は、損害賠償金を受け取れません。
このような場合は、「被害者請求」を検討してください。
被害者請求とは、加害者が任意保険に加入していない場合や、加害者が任意保険に加入しているものの保険会社の対応に誠意が見られない場合に行う手続きで、死亡事故における自賠責保険の保険金を示談の成立を待たずに受け取ることができます。
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死亡事故における自賠責保険の支払いは、過失割合による独自の減額割合でなされるが、自分の過失割合が低くても相手への弁済が高額となる事もあるので注意が必要である。
任意の自動車保険に加入せず自賠責保険のみに加入している「無保険車」の割合が、全国的に増えているため、死亡事故などの大きな事故の際には被害者に対して保険金が足りないなどの問題が生じている。
交通事故や死亡事故の加害者や加害者の保険会社に対する保険金の請求権は、2年もしくは3年であるため、時効以前に示談をしないといけないが、時効を中断する方法もあり、弁護士と相談をした方が良い。
死亡事故は、傷害事故と違い被害者が意見を述べることができないため、過失割合に納得できない遺族は、弁護士に事故を調査してもらって正しい過失割合を主張するほうが良い。
家族が死亡事故に遭った場合、警察や保険会社、あるいは葬儀社とのやりとりをしなければならない。それらの負担を抑えられるメリットがあるため、弁護士へ依頼するのもひとつの手段である。
