遷延性意識障害の定期金賠償とは?
交通事故で遷延性意識障害となった場合、加害者や加害者が加入している保険会社が支払う補償金は数千万、時として1億を超えることも珍しくありません。
ですが、裁判所の判決により加害者に支払いを命じても、加害者が自動車保険に加入しておらず、しかもそれだけの資産がないため、分割払いにすると言う事があります。
そのため、「加害者が夜逃げしてしまったり、お金がなかったら支払ってもらえないから、リスクが高すぎる」とよく言われます。
実際、自己破産しても損害賠償の責任はなくなるわけではありませんが、行方不明になったり、著しく収入が少なかったりすると、支払ってもらえないこともあります。
「でも、自動車保険の会社から支払ってもらうから、そんな心配はない」と思う方もいるかもしれませんが、実は保険会社でも同じような問題に陥る危険性があります。
その危険性とは、定期金賠償という制度です。
定期金賠償は不利?有利?
遷延性意識障害の場合、交通事故の損害賠償のほかに、患者が亡くなるまでの生活保障や医療費なども併せて請求します。
損害賠償などは遷延性意識障害となったことによる補償なので、一括して支払われることが多いのですが、将来の生活費や医療費に関しては定期金賠償、つまり「毎月(毎年)支払う」と言う形にすることがあります。
定期的に毎月(毎年)賠償金が支払われるため、人によってはこちらの方が良いと考える人もいるかもしれませんが、問題がないわけではありません。
定期金賠償にしていて、その保険会社が倒産してしまった場合には、以後の賠償金は支払ってもらえなくなります。
また、定期金賠償で支払うのは「遷延性意識障害の患者が生存している間に限られる」としている保険会社が多く、早期に患者が亡くなってしまうともらえる保険金の総額が、一括で支払われる場合よりも少なくなってしまう可能性があります。
遷延性意識障害の患者が、健常者の平均余命まで生存することはままありますが、肺炎などの副次的な病気にかかりやすいと言ったことから、保険会社では「遷延性意識障害の患者の寿命は10年」との考えが通例となっています。
そのため、おおよそ50代以下の遷延性意識障害の患者に対しては、定期金賠償にした方が得だという保険会社の思惑があります。
しかし、平均余命を超えて生存された場合は定期金賠償の方が得になるケースもありますので、一概にどちらかがいいのかとは言い切れません。
利点を挙げるとすれば、万が一財産管理をしている親や配偶者の金遣いが荒く、一括で支払われた補償金を使い切ったとしても、生存している限り定期金賠償金が支払われるため、新たに弁護士などが後見人となり、しかるべき療養施設に入所できる可能性が高くなるという点です。
遷延性意識障害の患者家族は、将来的なリスクも見据えて保険金の受取方法を考える必要があります。
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遷延性意識障害となった場合、損保会社との交渉は成年後見人しかできない事が多く、今後の治療費の支払いなどを考えると、速やかに成年後見制度の申請を行った方が良い。
交通事故の被害者が遷延性意識障害となり、支払われる賠償金を分割で受け取る定期金賠償は、逸失利益で中間利息を控除しないので賠償金の総額が増える。
交通事故の遷延性意識障害の示談の場合、示談のタイミングが難しいのと示談金額の交渉が難しいため、弁護士に任せた方が良い。
被害者が遷延性意識障害となった交通事故の示談では、生活費控除、在宅介護の蓋然性、余命制限、定期金賠償の4つが代表的な争点となる。保険会社の主張に対する反論の準備が必要。
遷延性意識障害における逸失利益を算出するにあたって、被害者の余命年数や生活費が問題として取り上げられやすい。場合によっては生活費が控除されるなど、賠償金が安くなる可能性がある。