家族が遷延性意識障害となった場合の定期金賠償とは
定期金賠償とは、賠償金を一括で払わずに、定期的に分割払いで支払うことです。
遷延性意識障害は、後遺障害等級第1級ですから、賠償金は高額になります。
自賠責保険は、定期金賠償など申し出ることなく、一括で保険金を支払いますが、加害者側の任意自動車保険会社は、高額な保険金をまとめて払うよりは、分割払いの方が会社の利益になると考えます。
定期金賠償を提案してくるのは、一部の保険会社のみです。
ですが、保険会社といえども企業なので、倒産する可能性は常にあります。
遷延性意識障害患者の年齢が若ければ、定期金賠償は数十年に及びますが、数十年後も、定期金賠償を支払う保険会社が安泰かどうかはわかりません。
もし保険会社が倒産したら、賠償金を受け取れなくなってしまいます。
さらに、定期金賠償の支払いによって保険会社との関係が将来にわたって続き、被害者家族に遷延性意識障害となった原因である交通事故のことを思い出させていつまでも加害者との関係が絶ち切れないことがつらい気持ちを増幅させるかもしれません。
定期金賠償は得をする?損をする?
家族が遷延性意識障害となり、賠償金を一括払いで受け取るか、分割払いで受け取るかは、悩ましい問題です。
まとまった現金資産があれば、投資してお金を増やせるかもしれないと思う人もいるかもしれません。
その一方では、分割払いならお金を使い過ぎて家計が苦しくなったりしないので安心だと思う人もいるかもしれません。
どちらが得かを判断するために、被害者に支払われる金額の総額で考えてみましょう。
賠償金が一括で支払われる場合、賠償金のうち、逸失利益は中間利息が控除されます。
全期間分の補償をおこなった場合、受け取った逸失利益は運用によって将来は実際の保障額を上回るので、将来の利息によって生じる増額分を控除することを「中間利息の控除」と言います。
逸失利益を全期間一括して支払われる場合、5%の利息を控除すると法律で定められています。
低金利時代の今、5%も控除されるのはなぜかと不満を抱く人もいるでしょうが、これは民法で定められている利率なので、法律が改定されない限り、中間利息の計算に用いる利率は5%です。
定期金賠償で賠償金を受け取れば、中間利息が控除されず、実際に受け取るお金の総額が、一括で受け取った時より多くなります。
ですので、加害者側が定期金賠償を主張してきた場合に拒否したい場合は、十分な根拠を示した反論が求められるので、弁護士にご相談してください。
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交通事故の示談交渉で保険会社から遷延性意識障害患者の余命は10年ほどとの主張がなされる時があるが、裁判所は平均余命を採用している。
交通事故で遷延性意識障害になった場合、保険会社は遷延性意識障害患者の余命を平均余命より短く計算して賠償金額を計算するので争点になりやすい。
交通事故の被害者が遷延性意識障害となり、支払われる賠償金を分割で受け取る定期金賠償は、逸失利益で中間利息を控除しないので賠償金の総額が増える。
18歳~64歳の遷延性意識障害患者は、介護保険等の公的な支援が受けられず、手当てが少なくなるため、加害者側に十分な介護費用を請求する必要性がある。
遷延性意識障害の示談金は数千万円になる事が多いが、保険会社が提示する金額は判例よりもかなり低いため、示談前に示談内容を弁護士に確認してもらうとよい。