遷延性意識障害における障害年金の手続きについて
交通事故で遷延性意識障害となった場合、成年後見開始の申し立てや高額療養費制度・限度額適用認定証の申請など、公的な申請や手続きをしなければいけないものがたくさんあります。
それらの手続きや遷延性意識障害患者の介護・交通事故の示談などに追われ、後回しがちになりますが障害年金の手続きも必要になります。
障害年金は4段階に分かれており、重い順から1級・2級・3級・障害手当金になります。
3級・障害手当金は厚生年金に加入していることが受給の要件になるため、国民年金しか加入していない場合は3級・障害手当金の受給相当の障害があっても支給されません。
遷延性意識障害の場合は障害の等級は1級に相当しているため、年金の保険料の納付要件を満たしている事と申請する書類に不備がなければほぼ認定されますが、国民年金や厚生年金等の公的年金を受給している場合には、現在受給の年金か障害年金かどちらか1つになります。
障害認定日に注意
交通事故当時すでに障害年金を受給している場合で、遷延性意識障害により等級が上がる場合には、新たに申請のし直しが必要となります。
「遷延性意識障害なら障害年金がもらえるのはほぼ確実のようだし、後から申請しても良いのでは?」と思われるかもしれませんが、いろいろと問題が生じることがあります。
一番大きな問題は障害認定日の問題です。
障害年金の支給は、「傷害認定日」もしくは「障害年金の手続きをした日」のどちらかになります。
障害認定日とは、障害認定の審査をして障害等級に当たる場合は、障害の原因となる傷病について最初に医師の診察を受けた日(初診日)から1年6ヶ月経った日、もしくは傷病が治った(障害、症状が固定した)日が、障害年金の受給権取得日となります。
遷延性意識障害の場合は、『遷延性意識障害の状態となって3か月たって、遷延性意識障害と診断された日』が障害認定日となるため、最短で交通事故から3か月で障害年金の受給要件を満たす可能性があります。
しかし、交通事故から3か月の時点から障害年金が支給されないことがあります。
障害年金は過去5年にさかのぼって請求することができるのですが、必ずさかのぼって支給されるとは限らず、手続きをした日からになることがあります。
例えば、交通事故に遭ったのが7年前で、遷延性意識障害と診断が下りたのが6年前だとします。
遡求できるのは5年間ですので、1年分は請求権が消滅しています。
さらに診断書の内容に不備があり、『確かに遷延性意識障害であると認められるのは手続きをした日』とされてしまうと、5年分全て支払われません。
しかし、障害年金を受給すると損害賠償金(交通事故の示談金)と相殺されて、支給が停止されるため、弁護士に相談の上障害年金の手続きをした方が良いでしょう。
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遷延性意識障害は交通事故を原因とする傷病の中でも、損害賠償の金額が極めて高額になりやすい。その点、保険会社と争点になる事も珍しくないため、弁護士を雇うことを視野にいれるべきである。
交通事故により負った遷延性意識障害の示談をする場合、将来的な介護も考えて交渉しなければいけないので、弁護士に相談をして示談交渉を進めるとよい。
遷延性意識障害となった交通事故の示談で患者家族が満足する示談内容を保険会社が提示してくることはないので、弁護士に依頼をして示談交渉を行う方が良い。
家計の中心である人が遷延性意識障害となると、患者家族の生活費がなくなり困窮することがある。そのような場合には仮渡金の請求を加害者側にするとよい。
家族が交通事故に遭って遷延性意識障害となり、示談交渉の際に「遷延性意識障害患者の余命がそうでない人より短い」と保険会社が主張しても、屈せずに弁護士に相談しながら正当な賠償金を請求すべきである。