自損事故によって遷延性意識障害に…保険金は受け取れる?
「交通事故で遷延性意識障害になった」と聞くと、「自動車同士で衝突した」「横断歩道を横断中に自動車にはねられた」など、加害者(相手方)がいる事故を思い浮かべることが多いと思います。
しかし、自動車同士の交通事故は、追突などの一部の事例を除いて、当事者同士にある程度の過失が課されることになります。
一見して遷延性意識障害となった患者に過失がないように思える事故でも、10~20%程度の過失が課されることも珍しくありません。
「ハンドル操作を誤ってガードレールにぶつかった」「スピードを出し過ぎてカーブを曲がりきれず、崖から転落した」といった自損事故では、交通事故を起こした者の過失は100%となります。
自損事故の場合は自賠責保険から補償がされませんので、任意の自動車保険に加入しており、かつ搭乗者傷害保険や人身傷害補償保険・自損事故保険などに加入していなければ、どこからも補償が受けられないことになります。
自損事故では人身傷害補償保険が一番
搭乗者傷害保険・人身傷害補償保険・自損事故保険は、自損事故の場合に保険金が支払われる保険特約なのですが、それぞれに大きく特色があります。
自損事故保険は、文字通り「自損事故」に対する補償で、運転手が死傷した場合には最高1500万円程度支払われることが多いです。(上限は保険会社による)
遷延性意識障害の場合は後遺障害ということで2000万円を上限に支払われることもありますが、遷延性意識障害患者の年齢が若い場合は、将来的な介護費用が足りなくなることもあります。
搭乗者傷害保険は、契約車両の搭乗者に対して支払われる保険ですので、運転手のほか同乗者に対しても保険金がおります。
搭乗者保険は一定の入通院日数があった場合や、死亡・後遺障害があった場合に規定の保険金が支払われるのですが、部位別の怪我の種類で画一的に支払われます。
頭蓋骨の骨折なら60万円、手指の打撲なら5万円といったようになっており、複数の怪我がある場合には、一番金額の高い部位での怪我の種類に対する保険金だけが支払われます。
搭乗者傷害保険の遷延性意識障害への保険金額は1000~2000万円と、遷延性意識障害としては大きな金額ではないため、経済的な不安がある場合もあります。
人身傷害補償保険は、オールラウンダーな保険特約として、最近は自動車保険本体に付帯することが増えています。
人身傷害補償保険は「自動車に関係する人身事故」であれば対応しているため、自損事故はもちろん、「歩行中に自動車にはねられた」「友人の自動車に同乗中、自損事故を起こされた」という場合でも、補償範囲になります。
人身傷害補償保険の補償範囲は、治療費のほか通院交通費や逸失利益・後遺障害慰謝料なども含まれますので、一般の自動車保険の補償範囲とほぼ変わりません。
上限金額も契約者が任意に選べるため、無制限で加入している場合には普通の交通事故と変わらない保険金の受け取りができることになります。
将来的な介護費用や逸失利益・後遺障害慰謝料などが高額となる遷延性意識障害では、無制限の人身傷害補償特約は心強い保険だと言えます。
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18歳~64歳の遷延性意識障害患者は、介護保険等の公的な支援が受けられず、手当てが少なくなるため、加害者側に十分な介護費用を請求する必要性がある。
遷延性意識障害患者の介護費用は、近親者が介護する場合には日額8,000円、看護士やヘルパーといった職業介護人に関しては実費を認めることがほとんどで、平均余命まで必要となるため高額となる。
最低限の賠償を補償するのが自賠責保険、不足分を補填するのが任意保険である。示談成立に時間がかかる遷延性意識障害では、被害者請求を利用しながら両保険金の受取法を選択すると良い。
被害者が遷延性意識障害となった交通事故の示談では、生活費控除、在宅介護の蓋然性、余命制限、定期金賠償の4つが代表的な争点となる。保険会社の主張に対する反論の準備が必要。
遷延性意識障害になった家族を自宅介護する場合、保険会社が介護費用の支払いに抵抗することがあるので、弁護士と相談して自宅介護の必要性を立証してください。