交通事故による脊椎骨折が治らず脊髄損傷となるケースとは
脊髄損傷は、文字通り治療不可能な脊髄が損傷するため、損傷後すぐに麻痺やしびれなどの症状が出ることが多いです。
しかし、交通事故直後は麻痺の症状が出なかったにもかかわらず、数日~数週間たってから麻痺が出ることがまれにあります。
交通事故で脊髄損傷となるケースとしては、脊髄だけが損傷するケースと脊髄の周りにある骨の脊椎も骨折するケースがあります。
脊椎の骨折だけであれば、骨折が自然治癒もしくは手術等による治療を行えば回復しますが、脊椎の骨折が自然治癒しない人もいます。
高齢者や骨粗しょう症などの持病がある場合には、脊椎の骨折が完全に治癒しないことがあり、脊椎骨折患者の約15%は骨折が完全回復しないと言われています。
脊椎の骨折が完全回復しないとどうなるかというと、家の柱が折れたままと同じ状態であるので、骨折した部分に自重がかかってしまいます。
脊髄は脊椎という骨の柱の中に通っている柔らかい神経の束なので、脊椎が骨折している部分の脊髄が圧迫されてしまい、脊髄を通る神経伝達に障害が出て麻痺やしびれが出てきます。
脊椎骨折を放置すると脊髄損傷を招く
脊髄が圧迫されて起こる麻痺やしびれは、圧迫が解放されると一気に病状が好転することが多いです。
ホースを踏んでしまうと水が出なくなりますが、足を退けると水の流れが元に戻るように、脊髄の圧迫の場合は圧迫の原因を除けば快方に向かいます。
しかし、脊髄が圧迫され続けると負担がかかりすぎて、ついには脊髄損傷を招くことになります。
また、骨折が十分に治りきっていない場合は、骨折した脊椎のかけらがやすりやナイフのように脊髄を傷つけてしまうケースもあります。
そのため、交通事故直後は『脊椎の骨折がある』だけだったのに、骨折が十分に治りきらず脊髄損傷を併発してしまう危険性があります。
このような脊髄損傷は、交通事故からかなりたってから受傷してしまうため、加害者側から「交通事故からしばらくたってから発症した麻痺は、交通事故の怪我とは別のことが原因」と、主張されてしまう事があります。
担当医師が「交通事故で受傷した脊椎損傷による脊髄損傷」との診断をした場合でも、「過度のリハビリで受傷部分に負担をかけすぎたからではないか?」とか、「自宅療養中に転倒したことが原因ではないか?」と、医療機関や患者に脊髄損傷が発症した遠因があるのではといった主張がされることもあります。
このような場合、医療機関との連携とともに、弁護士に相談の上弁護士を通して交渉する方が良いでしょう。
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交通事故により脊髄損傷を負い、歩行困難となった場合には、移動に必要な杖や車いすの購入費用のほかに、福祉車両や民間救急車などの移動手段についても請求できることがある。
交通事故による脊髄損傷で入院中の入院雑費は、日額1,100~1,500円で計算されるが、それを上回る請求をする場合には立証証拠を揃えて弁護士から請求してもらう方がよい。
脊髄損傷となった患者の約半数は交通事故が原因だが、脊髄に血液を送る血管の血流が途絶えて脊髄に血液が流れなくなることが原因でも脊髄損傷は発症する。
保険会社が事故による脊髄損傷と認めないケースには、事故が軽微であったり、症状の発症が遅いことがあげられる。保険会社に認めさせるには、弁護士に相談をした方が良い。
脊髄損傷の治療で、保険を適用して再生医療を受ける場合には、期限や条件があるため、治療を希望する場合には速やかに手続き等を進める必要がある。