保険会社が交通事故の示談から手を引くと言ってきました
【質問】
3カ月前に交通事故で脊髄損傷になり、腰から下の下半身麻痺で一生車いす生活になるだろうと言われています。
過失割合が0:10の交通事故であったため、当初から私個人と加害者側の保険会社とで交渉をしていたのですが、最近になって保険会社が示談交渉から撤退すると言ってきました。
思いがけない話に相手の保険会社に問い合わせたのですが、「加害者と直接交渉してください」と言われてしまいました。
保険会社に示談を拒否される理由が思いつかず、「もしかしたら加害者が怖い人で、問題があるのかな?」と不安になっています。
この場合、保険会社と交渉を続けてもらえるようにお願いした方がいいのでしょうか?
もし、加害者と直接交渉をしなければいけないのであれば、弁護士を雇って交渉をした方が良いのでしょうか?
【回答】
交通事故の加害者が自動車保険に加入していた場合には、加害者の代わりとなって保険会社が示談交渉を行うのが通常です。
しかし稀に、保険会社が示談交渉から撤退することがあります。
保険会社が撤退する理由にはいくつかあるのですが、代表的なものでは「加害者もしくは被害者に問題があり、弁護士が示談交渉をした方がスムーズである」と判断した場合です。
交通事故の当事者が保険会社に対して脅迫行為があったり、通常の示談の範囲を超える請求を繰り返したりなどの問題行動がみられる場合には、保険会社自体が弁護士を雇い、示談交渉に当たらせることがあります。
もう一つの理由は、加害者が加入している保険に問題がある場合です。
どういうことかと言うと、仮に加害者が加入している自動車保険の保険上限額が5000万円だったとします。
ですが、交通事故による脊髄損傷の損害賠償請求額の試算が8000万円だった場合には、保険だけでは3000万円足りない計算になります。
そうなると保険会社の方は、「保険会社から5000万円受け取って示談をするか、8000万円の請求をするか加害者と話し合ってください。しかし、加害者と話し合って決めた示談金額がいくらであろうと、保険会社は5000万円までしか支払いません。」ということになります。
質問者の場合は、保険会社が弁護士をたてずに直接加害者と示談することを促しているため、単純に保険金の上限が低かったからだと考えられます。
このケースでは5000万円の保険金を受け取ってあきらめるか、弁護士を雇って加害者に対して正当な請求をするかのどちらかになるかと思います。
どちらにしても加害者と直接交渉するのが不安であれば、弁護士を雇って交渉に当たらせる方が良いでしょう。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
保険会社と示談交渉で納得できる回答がもらえず裁判と言われた場合、弁護士を通じて交渉した方が有利に進められる。
交通事故で保険会社との示談交渉が進まない場合に、加害者に直接連絡をしても法的に問題はないが、損害賠償金を支払うのは保険会社なので効果的ではない。
交通事故が原因で営んでいる自営業に損失が生まれた時、損害賠償を請求する事ができる。請求できる範囲には限りがあるため、しっかり確認する必要がある。
交通事故という緊急事態では本来の性質が出やすく、不誠実な態度で謝罪のない加害者もいる。憤りを感じても冷静に対処し、十分な損害賠償を受けることに目的を絞ることが大切である。
仮に交通事故の示談交渉を弁護士に任せたとしても、保険会社と交渉する場に、被害者が同席する事は可能である。しかし、その場合にはスムーズに事を進めるために入念な打ち合わせが求められる。