死亡事故の保険金を受け取りたくない時はどうすればよい?
【質問】
1カ月前に、警察から父の死亡事故を知らせる電話がありました。
父と母は25年以上前に離婚し、私も20年以上父とは会った事がありません。
母は去年に病気で他界したため、父の身内と言えるのは一人息子の私だけになります。
そのため、仕方なく父の葬儀や住んでいたアパートの退去などは私がしました。
先日、死亡事故の加害者が加入していた保険会社の担当から、示談交渉をして欲しいとの連絡がありました。
実は、父の死亡事故の保険金の受け取りに乗り気ではありません。
離婚の原因は父親の借金と母に対する暴力で、私は離婚当時中学生であったため、父親の非道ぶりはしっかりと記憶に残っています。
そんな父の保険金を受け取るのは汚らわしい気がして、受け取るのを躊躇しています。
相続放棄も考えたのですが、父のアパートを引き払う時に父名義の土地の権利書を見つけ、その土地には現在父の弟の息子夫婦が住んでいることがわかりました。
下手に相続放棄をして土地を国にとられ、従兄弟夫婦が立ち退かなければならなくなると困ったことになるためどうしてよいか分からなくなっています。
この場合どうすればよいでしょうか?
【回答】
死亡事故により長年会っていなかった父親の相続が発生し、相続するのも気持ちの整理がつかないし、相続放棄すると弊害が出ると悩ましい状態であるとお察しいたします。
セオリー通りの相続であれば、父親名義の土地を相続し、土地を従兄弟夫婦に売却(もしくは贈与)して従兄弟名義にしてしまい、死亡事故の保険金を相続するという形になります。
弁護士の立場からすると、相続にかかる相続税や不動産の名義変更費用などを保険金でまかなえる可能性が高いため、この方法が一番のお勧めとなります。
相続放棄する方法もありますが、その場合父親の弟などの兄弟が存命しているのならば兄弟が相続人となるため、兄弟が弟一人ならば、弟が父親の財産のすべてを相続します。
しかし、父親の弟である叔父が亡くなっている場合には、叔父の子である従兄弟が相続することになるのですが、他に相続人がいる場合には従兄弟が無事に土地のすべてを相続できるとは限りません。
また、父親が生前に借金をしていた場合には、土地や死亡事故の保険金は債権者への支払いで消えるだけでなく、それでも借金が残った場合には相続人が支払うことになります。
しかも、相続放棄は死亡したと知ってから3カ月以内に行わなければいけないため、早めに弁護士に相談して亡くなった父親の財産・借金の洗い出しをし、従兄弟を交えて相談をした方が良いでしょう。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
死亡交通事故による保険金の相続も、相続人同士の同意があれば、話し合いで相続内容を決めることができる。
交通事故により死亡した被害者が複数いて、その請求権が1人の遺族になる場合には、示談交渉がかなりの重責となることがあるため、弁護士に依頼をして保険会社と交渉してもらう方が良い。
交通事故によって死亡した被害者に借金があった場合、そのまま相続する場合と比べて様々な手続きが出てくるため、法的な手続きは弁護士に任せた方が良い。
内縁関係の相手が交通事故で死亡した場合には、遺族慰謝料や扶養権利に基づく請求をすることができるが、大前提として内縁関係の証明が必要になる。
交通事故で後遺障害等級認定の結果に納得できない場合には、異議申立てを行うことが可能である。必要な資料を準備し直して正当な等級の認定を得ることが、賠償金額に大きく影響する。