交通事故によるむち打ちにおける労働能力喪失率は?
むち打ちの後遺症で以前と同じように働けなくなった場合、後遺障害等級による労働能力喪失率が問題となります。
後遺障害による労働能力喪失率とは、『後遺障害でどれだけ働けなくなったか?』というもので、一番高い1級で100%、一番低い14級で5%になります。
むち打ちの場合、12級か14級になる事が多く、12級で14%、14級で5%になります。
仮に年収500万円の場合、12級で70万円、14級で25万円までの収入の減少を逸失利益として請求できることになります。
逸失利益の請求に関して加害者と争点は大きく3つあります。
1つ目は、後遺障害の等級について
2つ目は、労働能力喪失率について
3つ目は、労働能力喪失期間について
です。
等級の認定には医学的な所見が重要視され、後遺障害認定の基準に則ったものが多いです。
また、労働能力喪失期間については、『一生涯続くので、労働できる67歳まで』というものと、『馴化による軽減で2~10年といった期間限定で認める』といったものがあります。
状況により大きく変わる労働能力喪失率
一方で、労働能力喪失率は状況により大きく変わります。
『12級で14%、14級で5%』というのは変わらないのですが、様々な要因で減額されることがあります。
例えば12級相当のむち打ちによる後遺障害があったとしても、交通事故以前の仕事を続けることができて給料の減額がなかったのならば、実質的な給料の減額はないため労働能力喪失率は認められないケースもあります。
ただ、給料が減額されていなくとも、『被害者本人の相当の努力や所属している会社や周囲の人の厚情により減額されていない』と認められた場合、満額もしくは相応の減額された金額がむち打ちによる逸失利益として認められたケースもあります。
また、交通事故以前からむち打ちで発症した後遺障害と同系類の症状があった場合には、『既往症の悪化』と判断され、既往症の症状を鑑みて減額されることもあります。
また、まれに後遺障害等級に準じた労働能力喪失率を超える損害があると認定された場合には、労働能力喪失率を上げるのではなく、慰謝料の増額という形で救済されることもあります。
具体的な例では、むち打ちで腕が上がりづらくなった美容師や着付けの講師が、『労働能力喪失率以上の実害があった』として、慰謝料の追加が認められています。
このように、ケースバイケースの判例が下されることが多いため、保険会社の提示に納得がいかない場合には、弁護士に相談の上で判断をするとよいでしょう。
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弁護士費用特約は、むち打ちで多く見られるもらい事故被害者らを救済するために設けられた特約である。利用すれば弁護士費用の心配がなく賠償金額を増やせる可能性があるが、使えないこともある。
交通事故で負ったむち打ちで後遺障害が認められた場合には逸失利益の請求が出来ることもあるが、馴化を理由に期間を限定されることがある。
交通事故でのむち打ちの治療費の支払いを保険会社から拒否された場合には、弁護士に依頼して保険会社の主張を反証してもらうのが一番良い。
交通事故による死亡者は減っているが、怪我人はそれほど減っておらず、交通事故で怪我をした人の6割はむち打ちになっている。保険会社にむち打ちを否定された場合には、弁護士へ相談するのが望ましい。
むち打ちを交通事故で負った場合、弁護士費用特約を利用して、慰謝料の増額に備えるのが望ましい。特に後続車からのもらい事故の場合、代わりに交渉してもらう方が安心である。