むち打ちを負ったのに人身事故として警察に届けないと…?
交通事故の多くは物損だけで済んだり、被害者の怪我が軽度のものです。
自動車の安全性能が良くなったことや、シートベルトの着用率が高くなったことも一因にあります。
そのため、軽い接触事故であれば警察に届けずに、お互いが自分の車の修理をすることで済ませたり、むち打ちの治療費を出すので人身事故にしないという提案をしたりする運転手もいます。
交通事故の示談は当事者同士の同意があれば、内容がどのようなものでも良いのですが、交通事故自体は発生した時点で警察への報告義務が生じるため、警察に届け出ないことは法律違反となります。
では、交通事故でむち打ちの症状があるのにもかかわらず、警察には物損事故として届けていた場合はどうなるのでしょうか?
警察には物損事故として手続きをしているため、むち打ちの治療費等は自賠責保険から支払われないので、被害者の自腹か加害者に請求することになります。
加害者が誠実な人で治療費が支払われればよいのですが、支払わずに雲隠れしてしまったり、『交通事故は物損なので、人身事故ではなかった』と支払いを拒否するような悪質なケースもあります。
わずかな首の違和感でも即病院で診断を
はじめに物損事故として警察に届けていても、後で人身事故に変えることは可能なのですが、その際には診断書が必要になってきます。
また、交通事故後すぐに医療機関で診断を受けていないと、交通事故によって生じたむち打ちなのか交通事故後に別の理由でなったむち打ちなのかが分からないため、警察に人身事故への切り替えを申し出ても、受理されない可能性もあります。
交通事故によるむち打ちに関する金銭的な事だと治療費が真っ先に浮かぶでしょうが、実際にはその他の金銭も発生してきます。
まずは病院に通院するための交通費です。
交通機関を使っても往復1000円で10回通院したのならば1万円になりますので、長く通院すればするほど、費用がかさんできます。
また、会社を休んだ際の休業補償もあります。
むち打ちの症状によってはめまいなどを引き起こすこともあり、出勤が不可能という場合は、給料が減った分の補償を加害者側に請求することができます。
そしてもう一つが、通院慰謝料です。
交通事故に遭わなければむち打ちになる事も通院する必要もないため、その分の負担を慰謝料として請求することができます。
自賠責の基準では、通院した回数か初診から完治までの期間の半分かどちらか少ない方に、4,200円をかけたものになります。
週2回のペースで1か月間、9回通院したのならば、9回か30日÷2=15の小さい方の9回を取って、4,200円×9=37,800円が通院慰謝料として請求できます。
自賠責基準は最低金額ともいえるものなので、判例であれば8,000円ほどになり、通院期間が長期になるほど差が大きくなっていくため、弁護士を介して示談をした方が得という事も多々あります。
交通事故で体に違和感をおぼえた場合は、すぐに医療機関で診断を受けて人身事故として警察に扱ってもらいましょう。
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交通事故に遭った時、その日のうちに病院へ診察に行くのが望ましい。もし後日に病院へ行ってむち打ちが発覚したとしても、交通事故との因果関係が認められない可能性がある。
身体の構造上、交通事故に遭うとむち打ちになりやすく、日々の習慣から首を動かしてしまうため、治りにくいときがある。軽度のむち打ちで治りが遅い場合、詐病にみられる事もあるので注意が必要である。
むち打ちなど、少額の治療費で自賠責保険しかない場合、健康保険を利用して治療した方が、最終的に手元に残る金額が多くなることがある。
保険会社は交通事故によるむち打ちの治療は認めても、継続治療は認められにくいといった特徴があるため、完治するまではむち打ち患者側も対応策をとる必要がある。
交通事故によって負ったむち打ちの治療中に治療費を打ち切られた場合には、医師に治療の必要性を認めてもらい、弁護士を通じて加害者側と示談するとよい。