脳脊髄液減少症によるむち打ちの新ガイドラインについて
交通事故で首にむち打ちのような違和感があったり、慢性的な頭痛やめまいなどがあるものの、レントゲンやMRIで頸部の骨や脊髄に異常が見られず「原因不明のむち打ち」と診断されていた症状があります。
「脳脊髄液減少症」と呼ばれるもので、交通事故などの強い衝撃で髄膜が破れて中の髄液が漏れ続けるために、脳内の髄液の水圧が減少して頭痛やめまいなどの症状を引き起こします。
髄膜は風船みたいな構造をしていますので、例え1㎜の穴でも髄液が漏れ続けるため、MRIなどの精密検査でも発見が難しいものとされてきました。
交通事故の場合、脳脊髄液減少症の被害者が「むち打ちの症状がある」と訴えても、医師が「MRIなどに異常が認められないので、むち打ちではない。」と退けられ、保険会社から補償が受けられないというケースが多数ありました。
新ガイドラインでは「疑い」所見の見極めが
現在のガイドラインでは脳脊髄液減少症は「原因不明のむち打ち」として、治療だけでなく補償も進まなかったのですが、このたび厚生労働省で2019年3月以降に新ガイドラインを公表するとしています。
新ガイドラインでは、MRI画像でも髄液漏れがはっきりしない「脳脊髄液減少症の疑い」所見の見極め方法を定め、ごく少量の漏れに対しても判別できるようになるとされています。
もし、このガイドラインが制定されると、今まではむち打ちではないと補償が受けられなかった交通事故被害者の救済になるだけでなく、治療面でも大きな変化があります。
脳脊髄液減少症には硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ療法)と呼ばれる、自分の血液で穴をふさぐ治療法が有効とされていて、2016年からは保険適応されています。
しかし、今までは「脳脊髄液減少症の疑い」や「むち打ちではない」と診断されていた場合、治療を受けることが出来ず、医師を説き伏せて無理に治療を受ける場合には自費診療となっていました。
新ガイドライン制定後は、「脳脊髄液減少症の疑い」であっても医師の指示があれば硬膜外自家血注入療法を受けられます。
しかも、保険適応の治療法なので自賠責保険の治療費の支払い対象となり、ひいては自動車保険にも適応されるものと思われます。
しかしながら、新ガイドライン制定直後は医療現場や保険会社にもまだ浸透されていないため、正しい診断や治療が受けられなかったり、補償が受けられなかったりする可能性があります。
その際は新ガイドラインが制定されたことを伝えるとともに、かたくなに拒否される場合には弁護士から伝えてもらうという方法もあります。
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交通事故でむち打ちとなった場合、その治療費を請求できる。しかし、むち打ちの治療は一般的に長くは続かず、途中で治療費を打ち切られるケースが多い。
交通事故によって負ったむち打ちの治療中に治療費を打ち切られた場合には、医師に治療の必要性を認めてもらい、弁護士を通じて加害者側と示談するとよい。
むち打ちの治療のために薬が必要となった場合、相手側に請求できるのは医師が診察の上で発行された処方箋の薬の購入費用のみになるため、自己判断で購入した薬は自己負担となり請求できない。
医学的な画像診断が得られないむち打ちの場合、神経学的検査が行われることもあるが、絶対的な検査方法ではない。
交通事故によるむち打ちが原因でうつ病を発症した場合、むち打ちの重症性や治療期間が重視されるため、原因であるむち打ちの医学的な根拠がなければ、うつ病の発症原因と認められる可能性は低い。