死亡事故の近親者慰謝料の請求によって変化する慰謝料の総額
死亡事故は被害者が他界して不在の状態で、被害者の権利を相続した相続人が損害賠償請求をします。
ここで言う相続人とは、遺言により財産を受け取ることができる受遺者ではなく、法律によって定められている、被相続人の財産を受け取る権利を持つ近親者です。
たとえば、死亡事故の被害者に祖父母、父母、配偶者、子どもがいた場合、相続人は配偶者と子どもです。
被害者の損害賠償請求について争う場合、相続人のうちの一人が代表者となって加害者と話し合うのが一般的です。
しかし、近親者慰謝料は、死亡した被害者の相続人でなくても請求できます。
近親者慰謝料とは、亡くなった被害者と特に関係が深かった近親者が受けた精神的な苦痛に対する慰謝料です。
法律上は、近親者慰謝料の請求権を持つのは、父母、配偶者、子であるとされていますが、実際には援用解釈により、それ以外の親族でも近親者慰謝料の請求が認められることがあります。
ただし、死亡した被害者と生前に親しくしていて、死亡したことにより大きな精神的苦痛を受けたことを証明する必要があります。
慰謝料は請求者が何人いても同額?
相続人であるかどうかにかかわらず、被害者が死亡したことによる精神的苦痛に対する損害賠償として近親者慰謝料が定められています。
しかし慰謝料は、死亡した被害者に対する慰謝料と近親者に対する慰謝料の総額で計算されるので、慰謝料を請求する近親者が何人いても、慰謝料の総額は変わらないという理論が成り立ちます。
つまり近親者慰謝料は、慰謝料の総額から人数に応じた配分をするので、1人あたりが受け取る金額が変わるだけなのです。
では、近親者慰謝料は請求する意味がないのでしょうか?
いいえ、近親者慰謝料を請求しても賠償金額が増えないので意味がないとは思わないでください。
慰謝料には定額がありません。
近親者慰謝料を請求することにより、陳述書や尋問で近親者がどのように感じているかを、裁判官に積極的に伝えることができるので、慰謝料を増額させる材料が増える可能性があるのです。
つまり、近親者慰謝料を請求することにより遺族の精神的苦痛の大きさを訴え、慰謝料を増額できる可能性があるのです。
死亡事故の賠償金には、医療費や葬儀費など、金額がはっきり決まっている積極的損害と、慰謝料のように話し合いによって金額が決まる消極的損害があります。
納得のいく慰謝料を受け取りたいと思っている死亡事故の遺族の方は、弁護士にご相談ください。
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死亡事故で自動車保険と生命保険の両方の支給要件を満たす場合、両方から保険金を受け取ることができる。
家族が死亡事故に遭った際に請求できる慰謝料は死亡慰謝料と呼ばれ、死亡した被害者本人に対する本人慰謝料と被害者の近親者に対する慰謝料といった内訳は2種類に分別される。
死亡事故の損害賠償請求は、亡くなった方の相続人が行う。複数の相続人がいる場合は、相続人の代表者が加害者側の保険会社と示談交渉することになる。
保険会社が提示する損害賠償金額は、自賠責基準とほとんど差がない。死亡事故の場合の自賠責基準と弁護士基準について見てみると基準額の決め方が異なり、数百~一千万円以上の差が出る可能性がある。
公務員が死亡事故を起こした場合、禁固刑以上の判決が下されると解雇となってしまうため、十分な弁済をしてもらえない危険性がある。