死亡事故の被害者の余命が争点となるケースについて
死亡事故において被害者の年齢は、損害賠償金の計算の重要なファクターとなります。
一般的な生命保険では、死亡時の生命保険金は病死や事故死などで変わることはあっても、年齢で変わることは少ないです。
しかし交通事故の場合、死亡事故の被害者の年齢により支払われる金額が大幅に変わってきます。
なぜかというと、死亡事故の損害賠償請求の中に、逸失利益というものがあるからです。
逸失利益とは、「本来なら得ることができた利益を逸失した(もらえない)」という意味で、死亡事故の場合は被害者が受け取れるであったであろう収入のことを指します。
逸失利益は、死亡事故の被害者の収入の多寡にもよりますが、余命が大きくかかわってきます。
単純計算で60歳の年収1000万のAさんと、25歳の年収500万円のBさんとでは、65歳まで働けると計算しても、
A:1000万円×5年=5000万円
B:500万円×40年=2億円
と、年収が半分でも余命が8倍もあるため、逸失利益は4倍の差が発生することになります。
保険会社からの余命の減算に注意!
実際の逸失利益の余命計算には専用のライプニッツ係数が使われますが、余命がいかに損害賠償請求金額に関わっているかわかると思います。
そのため、保険会社は死亡事故の被害者の余命を減算して計算をしてくることがあります。
保険会社の主張としては、「被害者には高血圧と糖尿病の持病があり、健康な人よりは寿命が短い」「3年前にガンを発症しており、ガンの再発率から考えても余命の計算は5年が妥当」などです。
死亡事故の遺族からすれば納得がいかないでしょうが、弁護士の立場からしても到底受け入れがたい保険会社からの主張と言えます。
実際の判例においても、ガンで余命3カ月の宣告を受けているなど、極めて余命宣告が短いものに関しては裁判所が認めるケースもありますが、ガンが1年前に発症して寛解状態などの場合は、健常者と同じ平均余命として計算する判決が下りています。
ですので、保険会社からこのような主張がされた場合には、死亡事故の被害者の遺族は反論するべきだと言えます。
特にこのような主張がされるのは、弁護士が介入しておらず、遺族のみで保険会社と交渉をしているケースがほとんどです。
保険会社側からすれば、「遺族にそこまでの知識はないだろう」と考え、遺族側からすれば「持病があったから、しかたがないのか?」となり、保険会社の思惑にはまってしまうことになります。
少しでも、保険会社からの話に疑問があるようであれば、交通事故に精通した弁護士に相談をしてみることをお勧めします。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
子どもの死亡事故の場合、成人の死亡事故に比べて過失割合が減算されたり、慰謝料が低めに設定されているため、注意が必要である。
死亡事故当時無職であった場合には、逸失利益を0円として保険会社は計算をしてくるが、裁判所の判断によっては逸失利益を認める判決が出ることがある。
賃貸オーナーの場合、収入は所有する不動産が生み出しているため、死亡事故で亡くなったとしても、逸失利益が認めてもらえないケースもある。
死亡事故の示談を損保会社からされた際には、親族間の紛争を減らすために損保会社への窓口は一人に絞る、損保会社からの交通事故の示談はすぐに了承しないなどの注意が必要である。
死亡事故では、加害者と被害者遺族間で、過失割合でもめることが多く、わずかな過失割合の差で金額が大きく変わるため、紛争となることもある。