睡眠不足により死亡事故を起こした場合の罰則は?
飲酒運転は運転自体が重大な法律違反で、死亡事故を起こした場合には懲役などの実刑が科されます。
そのため、飲酒運転による死亡事故の場合、自動車保険でも歩行者などの相手方に対しては補償しますが、運転手に対しては人身傷害特約など通常ならば支払われる保険金に対しても、支払われることはありません。
ですが、トラックやバスの事故で、「睡眠不足でぼーっとしていた」「過密勤務で疲れがたまっていて、前をよく見ていなかった」と言う場合にはどうなるのでしょうか?
一般的には安全運転義務違反に問われ、ぼーっと運転しているのも「漫然運転による前方不注意」とされますので、より過失割合を問われることになります。
「徹夜明けに運転していた」「毎日3時間ぐらいしか寝ていなかった」と言うような睡眠不足の状態は、「漫然運転による前方不注意の安全運転義務違反」で2点の減点となります。
飲酒運転の6~25点の減点からすると大幅に軽いように思われますが、睡眠不足で運転しているドライバーは飲酒運転のドライバーよりも何倍も多いと考えられるため、死亡事故に対する割合も高くなります。
ある調査では、睡眠不足での運転時の死亡事故の発生率は約6%と、通常の運転の5倍近いことが分かっています。
裁判の場合には加害者の過失割合に追加される
裁判でも、死亡事故当時のドライバーの体調が焦点となりますが、多くの場合でドライバーの過失割合の増加につながっています。
なぜならば、道交法第66条で「何人も、前条第一項(飲酒運転等)に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。」となっているからです。
厳密に言えば、睡眠不足や発熱、風邪など体調が万全でないのに運転することはできません。
高血圧や糖尿病による低血糖症もこれに当たるため、該当する人は驚くほど多いと言えます。
そのため、加害者の「仕事が忙しく睡眠不足で…」という言い訳は、自ら罪を重くしているのにほかなりません。
さらに、タクシーやトラック運転手で業務中の死亡事故であった場合には、加害者の会社に運行管理者責任を問うことができます。
会社は自動車を運転する従業員の事故に対して、同等の責任を負う責任があります。
そのため、バス会社などでは運行前に飲酒運転や健康チェックを行っているところが多くあります。
もし、示談で相手方が「睡眠不足で疲れていたので、事故を起こしたので、大見に見てもらえませんか?」と言うニュアンスで交渉してきた場合には、反対に「体調が万全でないのに運転するのは、道交法違反です」と反論することも可能です。
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死亡事故でも加害者が刑務所に行くとは限らない理由には、死亡事故が偶発的に起きて加害者に殺意の意思がないことが、法的に大きな理由になる。
死亡事故で被害者家族が加害者の減刑を望む場合には、謝罪を受け入れる・示談交渉に応じる・減刑の陳情を裁判所に対して行うなどの方法がある。
死亡事故の加害者は、事故発生後に逮捕される。最長23日間拘留され、その後、起訴するか不起訴か検察が判断する。加害者の減刑は、被害者との和解が重要視される。
死亡事故の加害者は、事故発生後に逮捕された場合、最長23日間拘留され、その後、起訴するか不起訴か検察が判断する。加害者の減刑は、被害者との和解が重要視される。
死亡事故で逮捕されると、取り調べと送検を受けて最短で3日、最長で23日以内に不起訴か起訴かが決まる。起訴されれば裁判を経て量刑が決まる。