死亡事故の逸失利益とはどういったもの?
死亡事故などで加害者の保険会社から支払われる金銭を一般的に保険金と呼びますが、内訳をみると治療費や慰謝料など細かく分かれています。
その中に逸失利益と言うものがあります。
逸失利益とは、本来なら得られたのに、不法行為により取得できなかった利益のことを言います。
逸失利益と言うと聞き馴染みがないかもしれませんが、損害賠償請求の事を思い浮かべると分かりやすいかと思います。
日常でも、「注文した品が時間通りに来なかったため、得意先への納品が間に合わずキャンセルされて、違約金まで支払わされてしまった」と言う事があります。
この場合、違約金の支払いが積極的逸失利益で、得意先に売れなかったことによる利益の損失が消極的逸失利益になります。
死亡事故の逸失利益は、被害者が生み出していた利益(会社の給料や自営業の売り上げ)が、死亡したことによりなくなったことを示します。
一家の大黒柱である会社員の夫が死亡事故に遭った場合には、この逸失利益の計算が重要となります。
逸失利益の計算は難しい
年収500万円のサラリーマンの死亡事故の逸失利益が、年500万円かというとそうではありません。
給料の中には家族の生活費の他に、亡くなった被害者の生活費も含まれているため、その分は生活費控除として引かれます。
一般的な妻と子がいる家庭であれば30%が生活費控除となりますが、妻にも夫と変わらないほどの収入がある共働き世帯では40%とされることもあります。
自営業で妻と共同経営をしている場合なども共働きとみなされたりするため、一概に30%~50%の間で決められることが多いです。
生活費控除が多くなると逸失利益が減り、保険会社から支払われる保険金が減ることになるため、しばしば裁判となる事も珍しくありません。
また、逸失利益を計算する上で必要な年収ですが、これでも係争となる事があります。
サラリーマンならばすぐに年収は分かりますが、自営業ですと収入の浮き沈みがあり、どの時点の収入とするかが問題となる事があります。
他にもフリーター・専業主婦・就職活動中で収入がなかったという場合には、保険会社は逸失利益を0円もしくは驚くほど低い金額を言ってくるため、弁護士に寄せられる相談の中でも大きな割合を占めています。
「子供が5人もいるので、生活費控除を30%も引かれたら生活できない」
「夫の給料だけで、夫の両親と私と子供が生活をしていたので、逸失利益の計算がそんなにも低いと困る」
と家庭の事情は様々ですが、被害者寄りの判決を下すことが多い裁判所も、無条件に被害者の言い分を認めませんので、事前に弁護士に相談をした方が良いでしょう。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
死亡事故では、加害者と被害者遺族間で、過失割合でもめることが多く、わずかな過失割合の差で金額が大きく変わるため、紛争となることもある。
死亡事故当時無職であった場合には、逸失利益を0円として保険会社は計算をしてくるが、裁判所の判断によっては逸失利益を認める判決が出ることがある。
賃貸オーナーの場合、収入は所有する不動産が生み出しているため、死亡事故で亡くなったとしても、逸失利益が認めてもらえないケースもある。
死亡事故の遺族が加害者と会えない場合には、刑事裁判の被害者参加制度を利用したり、加害者の裁判を傍聴したりといった方法があるため、弁護士に相談をして様々な方法を探るとよい。
死亡事故の遺族が損害賠償に関する争いで困ったら、裁判外紛争解決機関に相談すると良い。裁判外紛争解決機関は、裁判のように時間がかからない上、費用をかけずに紛争を解決する手段を提案してくれる。