混同されがちな遷延性意識障害と脳死の違い
遷延性意識障害は、以前は「植物状態」と言われていました。
そのため、40代以上の方はテレビドラマなのでは「植物状態」と言う表現が使われていたため、聞き馴染みがあると思います。
また、似たような言葉に「脳死」と言う言葉があります。
以前から脳死による移植が話題になっていましたが、5年前に15歳未満の脳死患者の移植が認められたため、ニュースでもたびたび目にするようになりました。
一般の方と話をすると、遷延性意識障害と脳死を同じだと勘違いしていたり、同じようなものと考えている方が多いことに驚かされます。
遷延性意識障害の患者の家族の中にも、家族が遷延性意識障害となられて、はじめて脳死と違いを理解される方もいらっしゃいます。
医療関係者や遷延性意識障害の患者家族からすると、天と地ほどの差がある遷延性意識障害と脳死ですが、世間からすると理解度はまだまだであることが分かります。
遷延性意識障害と脳死の根本的な違いについて
われわれ人間は普段は意識していませんが、生命維持のために脳から神経を通って各器官に命令が送られています。
たとえば呼吸や体温調整、排尿や自律神経の調整などです。
脳死は脳の働きを示す脳波が平坦になり、身体の各器官に生命維持のための命令信号が送られなくなります。
そのため、自発呼吸ができなくなり人工呼吸器が必要になったり、場合によっては心臓マッサージなどが必要になります。
もし、人工呼吸器を外してしまえば、脳死ではなく本当の死が訪れます。
一方遷延性意識障害では、主に生命維持を司る小脳にダメージがなく、意識の覚醒や身体の筋肉収縮にかかわる脳の部分に障害があります。
それゆえに、人工呼吸器などななくても、栄養管理や介護環境を整えれば生き続けるとこが出来ます。
保険会社が支払う保険金の減額目的で「遷延性意識障害の患者は長生きできない」ということがありますが、遷延性意識障害が遠因となる事はあっても、死亡の直接的な原因とはなりません。
遷延性意識障害の患者の中には、パソコンの発展から眼球の動きを読み取って意思の疎通ができた人があり、イギリスの例ですと「15年前に遷延性意識障害となった状態から意識が鮮明にあり、ただ体が動かず声が発せなかっただけですべて覚えている。看護婦からされた屈辱的な行為も覚えている。」と男性が告白し、大きな騒動となったことがあります。
将来的に、遷延性意識障害の患者の脳波を読み取って、考えが表現できる機械が開発されれば、健常者と変わらないコミュニケーションをとれるかもしれません。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
交通事故で遷延性意識障害となっても、個室の利用料を加害者側に支払わせるのは難しいと言える。
筋肉が衰えると様々な障害症状が出てくるため、遷延性意識障害でも筋肉トレーニングが不可欠である。
専業主婦が交通事故により遷延性意識障害となったケースでも逸失利益等は認められ、交通事故以前に家族の養育や介護をしていた場合には、その家族の養育費用や介護費用を請求できることもある。
遷延性意識障害の患者を自宅で家族が介護する場合、家族による介護費用の補償がされることがあるが、絶対的なものではないため、示談前に弁護士に相談をするほうが良い。
遷延性意識障害患者の家族が自宅介護を希望しても保険会社が反対する場合には、自宅介護が行える要件を満たしているのならば、裁判所も自宅介護を認めるため、もめた場合には弁護士に相談をした方が良い。