示談成立前に遷延性意識障害の被害者が死亡した場合には?
交通事故で遷延性意識障害になると、むち打ちなどの一般的な怪我とは異なり、症状固定までに数年の時間が必要となる場合がほとんどです。
医師の方ではおよそ1年半を症状固定時期の目安とすることが多く、後遺障害等級の手続きをしたり示談を進めているうちに数年が経過していきます。
そのようななかで、示談成立前に交通事故の被害者本人が死亡してしまうケースがあります。
このとき交通事故についての示談が進行中であっても、当事者が死亡してしまうことによって示談そのものが白紙となります。
和解する本人が遷延性意識障害のため家族が代理人となって交渉を進めていたとしても、代理する対象者がいなくなったことから代理人ではなくなり、やはり示談はいったん白紙となります。
その後改めて被害者遺族として、加害者に対し交通事故についての損害賠償請求を開始することになります。
被害者が生存中の示談とは請求内容が異なり、将来的な介護費用や治療費、自宅の改装費用など、実費として発生しない費用は含まれません。
交通事故と死亡とに因果関係が認められるか?
示談交渉において注意が必要なのが、交通事故と死亡とに因果関係があるか否かです。
因果関係の有無によって損害賠償請求の範囲が大きく変わってきます。
例えば、交通事故で遷延性意識障害となって数ヶ月後、入院先で被害者が肺炎にかかって死亡したとします。
入院中は感染症にかかるリスクが高いですし、寝たきりの状態で臓器機能や免疫機能が低下して罹患しやすいこと、体調不良を伝える術がないため、症状に気づきにくいことから、こういった事例は珍しくありません。
このとき、遷延性意識障害で除痰が難しかったために肺炎が重症化し死亡した、という医師の所見があれば、そもそも遷延性意識障害が無ければ死亡に至らなかった、つまり交通事故と死亡には因果関係があると認められる可能性が高くなります。
医師の所見と合わせて保険会社と交渉し、交通事故による死亡であると考え、交通事故から死亡までの間の治療費用、休業補償、さらに死亡に関する逸失利益などを損害賠償請求することになります。
一方で、遷延性意識障害のために車いすに乗り、その移動中に転倒して頭を打って死亡したというようなケースでは、交通事故と転倒とに因果関係が認められないため、死亡に対する損害賠償請求は認められず、交通事故そのものに対しての損害賠償請求となります。
死亡という結果は同じでも、何が原因なのかで賠償内容が大きく変わってきます。
過去にどのような判例があるのかなど、弁護士に相談してみましょう。
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交通事故で遷延性意識障害となった場合、むち打ちや死亡事故などとは異なる損害賠償の請求項目がある。将来的に余計な経済的負担を負わされないためにも、抜けなくチェックする事が大切である。
遷延性意識障害を発症した人の5割は交通事故が原因である。これは、頭部や胸部を強打して脳に深刻なダメージを受けて脳の機能を失うためである。
遷延性意識障害は交通事故を原因とする傷病の中でも、損害賠償の金額が極めて高額になりやすい。その点、保険会社と争点になる事も珍しくないため、弁護士を雇うことを視野にいれるべきである。
交通事故により遷延性意識障害となった場合の示談の時効は、交通事故後3年ではなく症状固定後3年になるため、時効を気にして無理に症状固定をする必要はない。
交通事故における示談交渉には時効が存在する。遷延性意識障害を負った場合も例外ではなく、しっかりと期間について意識しておく事が、損害賠償を請求する際には重要である。