遷延性意識障害と仮渡金制度について知っておきたいこと
交通事故で突然遷延性意識障害となった場合、一番大きな問題が当座の生活費や治療費になります。
加害者側が任意の保険会社に加入していたり、遷延性意識障害となられた方が人身傷害保険や搭乗者傷害保険に加入していた場合は、保険会社から治療費が支払われることとなりますが、自損事故であったり無保険車との事故の場合は、治療費は自己負担となる事が多いです。
遷延性意識障害の場合、怪我などによる入院と比べ入院費が高額となるため、高額療養費制度が活用できるケースであっても、入院費が20万以上かかることも稀ではありません。
そのため、家庭の収入の要である夫が交通事故で遷延性意識障害となった場合には、「収入が途絶えてしまった上に、毎月入院費が20万円以上かかり、300万円あった貯金は半年で底をついてしまった。」と言う事が現実として起こります。
交通事故当初から保険会社が介入し、治療費は直接保険会社に請求するといったパターンでも、遷延性意識障害の患者の生活費は必要となるので、保険会社との示談が成立して保険金が支払われるまでの生活費を確保する必要があります。
保険金の先払い「仮渡金」とは?
多くの方は「交通事故は怪我が完治するか症状固定をしてから示談が始まり、示談が成立したらやっと保険金が支払われる。」と思われています。
これは基本的には正解なのですが、実は被害者や被害者家族の救済のための仮渡金制度があります。
仮渡金制度とは、示談や和解が済んでいない交通事故であっても、被害者からの請求があれば保険金の一部を仮渡金と言う形で先払いしてもらえる制度です。
自賠責保険であれば、死亡の場合で290万円、傷害の場合は40万もしくは20万円の支給となります。
損害保険会社においても、仮渡金の制度を取り入れているところが多く、当座の生活費に困っているのならば、加害者側の保険会社に仮渡金の制度がないか確認してみると良いでしょう。
交通事故により遷延性意識障害となった被害者や被害者家族にとって、ありがたい仮渡金の制度なのですが、全くデメリットがないかと言うとそうでもありません。
1つが自賠責保険に仮渡金請求をする際には、書類を揃えないといけない事です。
どんな手続きでも書類が必要となるので、これは許容範囲内と言えます。
もう1つが、任意保険会社の仮渡金請求の場合、後の示談交渉で不利となることがあることです。
保険会社によっては仮渡金を受け取る際に、書類に署名押印を求められることがあるのですが、その中の条文に示談のことが書かれていたら要注意です。
「○月○日までに示談を行うことで同意した」などと書かれていた場合には、もし本格的な示談交渉となり補償金額に不満があり話し合いが長引いた場合でも、期日が来たらその内容で示談しなければいけない危険性が生じるからです。
そういった内容が書かれていない場合でも、保険会社の担当が「こちらも被害者の方がお困りのようですから、仮渡金として先払いして誠意を見せているつもりなので、示談に応じてもらえないですか?」と、弱みに付け込んだような発言で示談を加害者有利に進めようとするケースもあるため、注意が必要となります。
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交通事故により負った遷延性意識障害の示談をする場合、将来的な介護も考えて交渉しなければいけないので、弁護士に相談をして示談交渉を進めるとよい。
被害者が遷延性意識障害となった交通事故の示談では、生活費控除、在宅介護の蓋然性、余命制限、定期金賠償の4つが代表的な争点となる。保険会社の主張に対する反論の準備が必要。
交通事故の遷延性意識障害の示談の場合、示談のタイミングが難しいのと示談金額の交渉が難しいため、弁護士に任せた方が良い。
遷延性意識障害の示談金は数千万円になる事が多いが、保険会社が提示する金額は判例よりもかなり低いため、示談前に示談内容を弁護士に確認してもらうとよい。
最低限の賠償を補償するのが自賠責保険、不足分を補填するのが任意保険である。示談成立に時間がかかる遷延性意識障害では、被害者請求を利用しながら両保険金の受取法を選択すると良い。