遷延性意識障害における積極的損害と消極的損害について
交通事故による遷延性意識障害の場合、加害者側が支払う損害賠償金が1億円を超える莫大な金額となることもあります。
どうしても損害賠償金の大きさだけに目がいきがちになってしまいますが、損害賠償金の内訳は細分化されており、大きく分けて積極的損害と消極的損害の2種類になります。
特に遷延性意識障害の場合、積極的損害の内訳が後遺症が残らない交通事故に比べてかなり多岐にわたり、金額も高額となる傾向があります。
そのため、積極的損害と消極的損害の違いとともに、その内訳を理解することでスムーズに損害賠償請求をすることができます。
多岐にわたる積極的損害
消極的損害は、交通事故が起こらなければ得られていた利益のことを指しますので、会社員などの給与所得者であれば給与が対象になります。
遷延性意識障害の場合は、交通事故から症状固定されるまでは休業補償、症状固定後は逸失利益として計算されます。
一方、積極的損害は、請求できる損害項目が多くあります。
●治療費・手術費用・入院費・通院費
遷延性意識障害の治療のための治療費です。
遷延性意識障害の場合、治療費が莫大となることが多いので、保険会社が病院に直接支払って、被害者家族が負担しないことも多いです。
症状固定後の将来的な治療費に対しても請求が出来ますが、この分の計算に対しては専門的な知識が必要となるのが通常です。
●入院雑費・入院通院時の付添費
入院をすると日用品などの雑費が必要となるため、その費用が日額1000円程度支払われます。
また、遷延性意識障害の場合、付添人が必要となるケースもあるため、付添人の費用も認められることもあります。
●通院用の交通費・宿泊費
自宅介護をしており、病院に通院していた場合には、その交通費も請求の対象となります。
また遠方地での治療・検査が必要になり、宿泊の必要性がある場合には宿泊費用も認められます。
●介護費用
積極的損害で、保険会社と紛争が起きやすい項目が介護費用です。
「家族が介護する場合には介護費用は支払わない」「家族が介護できるのならば、費用が高い職業介護人の費用を認めない」といった、判例とは異なる主張をしてくるため、裁判所の判断である判例を基準とした請求をする必要があります。
●介護器具の購入・自宅介護のための改築・リフォーム等の費用
これらの項目は、「自宅介護をする」ということが前提にあります。
遷延性意識障害の患者家族が自宅介護を望んだ場合でも、家族に介護技術の不足や家の間取り、構造上の不備などから、自宅介護が認められないこともあります。
ほかに付属的なものとして
●損害賠償請求のための費用・弁護士費用
●遅延損害金
がありますが、これらは付属的なものであるので、請求できない事もあります。
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交通事故で遷延性意識障害になった場合、保険会社は遷延性意識障害患者の余命を平均余命より短く計算して賠償額を計算するので争点になりがちである。
交通事故で遷延性意識障害になった場合、保険会社は遷延性意識障害患者の余命を平均余命より短く計算して賠償金額を計算するので争点になりやすい。
交通事故が原因で遷延性意識障害となった後は、ご家族あるいはヘルパーにおける介護が求められる。将来的に介護をしていく上でいくつかの注意点がある。
交通事故による被害で遷延性意識障害となったとき、加害者側に損害賠償請求できる項目には、症状固定までの治療費関連、付添看護費、逸失利益、慰謝料や改装費などがあり、仔細に検討する必要がある。
18歳~64歳の遷延性意識障害患者は、介護保険等の公的な支援が受けられず、手当てが少なくなるため、加害者側に十分な介護費用を請求する必要性がある。