遷延性意識障害患者の移動手段はどうすればいい?
遷延性意識障害の患者家族が抱える大きな問題に、転院問題があります。
現在の医療制度では3カ月ごとの転院を余儀なくされるため、転院先の確保は遷延性意識障害患者の家族にとって最優先事項とも言えます。
その転院問題に付随して起こるのが、患者の移動問題です。
遷延性意識障害患者は寝たきりのことが多いため、多くの場合は寝たままの移動をします。
寝たままの移動となると、おのずと寝台車が必要となるのですが、多くの場合は救急車を利用します。
転院先が同一の行政管轄である場合には、行政が管轄している救急車が利用できることもあります。
(この場合、緊急搬送ではなく、単なる輸送のため、赤色灯やサイレンは使わず走行します。)
しかし、ほとんどの場合で民間の輸送手段が使われます。
あまり距離が遠くなく、遷延性意識障害の患者が座位を保つことができるのならば、車いすに対応した介護タクシーが使われることがあります。
安全だが高額な民間救急車
ですが、遷延性意識障害の患者が座位を保てない、座位では長距離の移動に耐えられないといった場合には、民間救急車が使われます。
民間救急車というのはあまりなじみがないかもしれませんが、全国の主要都市には必ずと言っていいほど会社があります。
主に、緊急性の少ない患者の自宅から病院や病院間の移動、重度身体障害者の旅行などに使われます。
民間救急車での移動には、大きな問題があります。
それは、ずばり費用の面です。
民間救急車はタクシーのように、時間制もしくは距離制による料金設定をしています。
専門性が高いこともあり料金は高めで、2時間もしくは30㎞の走行で1万円前後かかります。
しかもこれは片道ではなく、民間タクシー会社から出発地、出発地から目的地、目的地から会社に戻るまでのすべての距離に費用が発生するため、少なく見積もっても出発地と目的地の往復距離の費用が必要になります。
さらに遷延性意識障害の患者を運ぶということから、看護婦や介護人といった職業介護人の同乗を義務づけていて、患者によっては「2人以上の介護人の同乗が必要」と規定しているところもあります。
高速道路などの有料道路を使った場合にはもちろん実費になりますので、一度の利用で5万円以上かかるということも珍しくありません。
3カ月ごとに転院を余儀なくされていれば、最低でも年に4回は利用しなければいけないため、意外と高い定期的な出費になります。
保険会社と示談交渉をする際には、将来的にこういった費用も発生することも含めて、保険金の請求をした方が良いでしょう。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
交通事故の被害者になり、遷延性意識障害となってしまった場合、将来的な転院のための移動費用、さらには介護費用等も視野にいれるべきである。今後を見据えて、適切な慰謝料の請求を行うのが望ましい。
交通事故により負った遷延性意識障害の示談をする場合、将来的な介護も考えて交渉しなければいけないので、弁護士に相談をして示談交渉を進めるとよい。
遷延性意識障害になると、やがて施設療養を続けるか、自宅療養するかを選択することになるが、保険会社の意見をうのみにせずに熟慮の上で選択しなくてはならない。
交通事故で遷延性意識障害となった場合、被害者と被害者の看護をする家族の補償を優先した示談がなされるべきなので、身内からの示談交渉への干渉がひどい場合には弁護士に依頼するとよい。
遷延性意識障害の示談交渉では、裁判した場合の損害賠償を前提として示談金を増額できる可能性がある。その参考となるような高額な賠償金判決例を紹介。