規模に関係なく交通事故により脊髄損傷を負うケースについて
『交通事故で脊髄損傷を負った』と聞くと、高速で走行していた自動車と接触した歩行者や車同士が衝突したといった重大な事故を思い浮かべると思います。
事故の規模が大きくなればなるほど、受傷率が高くなり重症化する傾向がありますが、軽微な事故でも脊髄損傷が起こります。
赤信号で停車中の自動車に前を見ていなかった後続車が衝突したといったケースで、後続車が直前で気が付きブレーキをかけたが間に合わなかったというのはよくあります。
トラックといった大型車がノーブレーキで追突した場合、停車していた自動車の同乗者が死亡するといったことも多々ありますが、普通車で減速した状態ならば停車していた車が1~2mほど押し出されるくらいで収まる事もあります。
そのような交通事故では、停車していた自動車の運転手や同乗者がシートベルトをしていれば、打ち身やむち打ちといった程度の受傷で済むことがあり、実際救急搬送されても事故の規模を聞いて受傷者がむち打ちの症状くらいしか訴えていない場合、実際は脊髄損傷を負っていても見過ごされるケースもあります。
軽微な交通事故でも脊髄損傷の危険が
実際の判例を見ると、追突事故で2mほど押し出された自動車の運転手が脊髄損傷を負ったのですが、加害者側が「本交通事故程度の衝撃で脊髄損傷となるのは考えられない」として争ったものがあります。
裁判所は被害者側の診断書や脊髄損傷による日常生活での動作の不便さを認め、被害者の脊髄損傷の後遺障害を認めました。
では、交通事故で脊髄損傷を負った場合、無制限に後遺障害が認められるかというとそうではありません。
完全脊髄損傷の場合は脊髄が断裂した位置から『身体のどの位置にどの程度の障害が出る』ということが予測できるのですが、不完全脊髄損傷の場合は予測がつかない場所に麻痺がおこったり、予想以上の強固な麻痺がおこる事があります。
そのため、加害者側からすると『被害者が脊髄損傷の後遺障害を大げさに申告しているのではないか?』という疑念が出ることがあります。
実際、脊髄損傷の麻痺がほとんどないにもかかわらず、医師の診察の時のみ麻痺のフリをしたり大げさに日常での不便さを訴えていた被害者が、加害者側から提出された『被害者が後遺障害が無く日常生活を送っている映像』によって、後遺障害の認定を退けられた判例もあります。
交通事故で脊髄損傷となられて後遺障害認定を受けた後でも、加害者と争うケースもありますので、そのような場合には交通事故に詳しい弁護士に相談した上で示談を進めていく方が良いでしょう。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
交通事故による脊髄損傷において後遺障害等級が必ずしも正しく認定されているわけではない。弁護士に依頼して異議申し立てを行えば、適切な対策が立てられるため、まずは弁護士に相談するのが望ましい。
交通事故が原因で脊髄損傷を負っても後遺障害等級が非該当になる場合もある。訴訟を起こさないためにも早い段階で交通事故の対応に優れている弁護士に相談すべきである。
交通事故により脊髄損傷となった場合の後遺障害等級は、7段階に区別される。脊髄損傷の後遺症が軽度な症状の場合、第12級など、下位の等級として認められる可能性がある。
交通事故の後日に脊髄損傷が判明しても、交通事故との因果関係の証明が難しいケースもあるため、弁護士に相談をした方が良い。
脊髄損傷の後遺障害等級認定が非該当になるケースには、客観性の無さや一貫性の無さなどの傾向が見られる。非該当の場合にもポイントをおさえた対応によって賠償金増額の可能性はある。