画像所見がない場合には脊髄損傷は認められないのか?
脊髄損傷は、脊椎内の脊髄の一部もしくはすべてが断裂などして損傷している状態なのですが、目視で確認できる場所ではないため、レントゲンやMRIなどの画像が重要になります。
こういったレントゲンやMRI・エコーなどの医学的な画像の事を、「画像所見」と言い、画像所見は医師が患者の傷病や症状を判断する上で、重要な情報となります。
交通事故に限らず医療事故や労災の裁判などでも、傷病の証拠として大きな効力を発揮するのも画像所見で、裁判所も有力な証拠として認めています。
ですが、画像所見も万能ではなく、微小な脊髄損傷であれば画像に現れない場合もあります。
そのため、患者本人や医者は脊髄損傷の症状があることを認めていても、保険会社が画像所見がないことを盾に、脊髄損傷と認めない場合があります。
脊髄の組織の再生は今の医療技術では不可能であるため、完治不可能な傷病と言う事になります。
脊髄損傷であると認めてしまうと、「交通事故により後遺症が生じた」と認めることになり、結果として保険会社が支払う損害賠償金の金額が増えることになるため、保険会社は頑として認めたがらないのです。
画像所見がなくても脊椎損傷と認めてもらうには
画像所見がなければ脊椎損傷と認められないかと言うと、一概にはそうとは言えません。
なぜならば、「MRI等に映らず画像所見がなくても、症状や治療経過などから、脊髄損傷と認められる」「脊髄損傷の中には、MRI等に映らない症例のものがある」、との裁判所の判例が複数あるからです。
反対に医師の脊髄損傷の診断書があるにもかかわらず、脊髄損傷と認められなかった判例もあります。
脊髄損傷は、脊髄断裂が起こった即時に発症し、その後の症状は現状維持か回復となるのが普通です。
ある裁判では、交通事故直後に脊髄損傷の症状を訴えず、また入院中も外出や外泊をするほどであったにもかかわらず、退院が近づくにつれ体調不良を訴え始め、交通事故から数カ月経ってから画像所見がないにもかかわらず医師が脊髄損傷と診断した患者に対して、「通常の脊髄損傷の症状とは乖離している」と脊髄損傷を否定した判決がされています。
画像所見がない場合に脊髄損傷と裁判所に認めてもらうには、医師の所見だけでは足りないことが分かります。
そのため、脊髄損傷の認定に関して、保険会社と争うつもりであるのならば、交通事故、特に脊髄損傷の交通事故に関して精通している弁護士に依頼する必要があります。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
交通事故が原因で脊髄損傷を負った場合、精度の高いMRI画像を撮影する、神経学的検査を受けるなどして、納得のいく後遺障害等級を認めてもらうべきである。
脊髄は老化による変形や損傷があり、交通事故後に脊髄損傷が見られても、交通事故に起因するものと認められず、診断が下りない事がある。そのような場合には交通事故に精通した弁護士に相談した方が良い。
脊髄損傷であっても麻痺などの症状がない場合には、後遺障害認定を受けることは困難である。
脊髄損傷になったら、精度の高いMRI画像を撮影する、神経学的検査を受けるなどして後遺障害診断書に添付する証拠を集め、納得のいく後遺障害等級を認めてもらうのが望ましい。
交通事故の規模が比較的軽微であっても脊髄損傷を受傷することがあるが、加害者側と後遺障害認定において揉めることがあるため、もめごとが起こった際はすぐに弁護士に相談した方が良い。