脊髄損傷になってしまったときに知っておくべき基礎知識
突然の交通事故で家族が「脊髄損傷になってしまった」と聞かされたとき、最低限知っておくべき知識を簡単にまとめます。
脳からお尻までつながっている33個の背骨を脊椎といい、その中にある神経の束が脊髄です。
首の部分を頚髄、胸から背骨部分を胸髄、そして腰髄、仙髄と続きます。
このいずれかの部分が損傷を受けるのが脊髄損傷で、神経が完全に途切れる完全損傷と、部分的に途切れる不完全損傷があります。
損傷部分の神経が支配する器官に障害が生じ、運動麻痺、排尿・排便障害、感覚障害、知覚麻痺、自律神経障害などとして現れます。
知っておくべき知識の1つとして、診断はレントゲン・CT・MRI撮影などの画像診断、知覚・麻痺・反射異常などを調べる神経学的検査、心電図・筋電図などの電気生理学的検査を用いて行われます。
現代の医療技術では、中枢神経を再生することができません。
そこで、さらなる損傷を防止し症状を軽減するための外科手術のほか、薬物療法、注射療法、理学療法を組み合わせて行います。
これらは保存療法と呼ばれ、残された機能を最大限に生かし、さらなる損傷を防ぐための対処です。
脊髄損傷患者の介護と、住居のリフォームについて
交通事故で脊髄損傷を負った被害者の家族は、介護と、介護のための住環境について知っておくべきであり、考えなければなりません。
排泄管理は重要です。
カテーテルによる自己導尿や、介助者による用手排尿によって、尿道や前立腺、尿路での合併症を予防します。
便を柔らかくする緩下剤や座薬を用いたり、摘便が必要な場合もあります。
排泄コントロールのために、規則正しい食事や運動、十分な水分の摂取を心がけ、肛門周囲を清潔に保つことが大切です。
脊髄損傷になると自力で体を動かせず、褥瘡の管理、つまり床ずれの予防が欠かせません。
血行の悪化を防ぐため、皮膚の保湿・保清、体位変換を常に行う必要があります。
寝たきりでは循環血液量がどんどん低下してしまうので、リハビリを積極的に行って血流を確保することが血栓予防になります。
呼吸器の筋力が麻痺している場合、肺そのものの機能が低下し、咳や痰が詰まりやすくなって肺炎や感染症に繋がります。
麻痺の状態に応じた呼吸器管理の必要があります。
脊髄損傷の状況により、自力歩行や伝い歩きが可能な方もいれば、杖や車いすでの生活になる場合も少なくありません。
状況に合わせた住居のリフォームが必要です。
段差の解消、手すりの設置などを行い、居室・廊下・トイレ・浴室をバリアフリー化します。
加害者のいる交通事故で脊髄損傷になった場合、加害者へ損害賠償を請求でき、リフォームの費用も請求に含むことができます。
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脊髄損傷のMRIで異常所見が得られるかどうかは、装置の解像度のほか医師の診断スキルや方針にも影響される。しかし、3.0ステラの装置や大病院の医師なら必ず異常を見つけられるわけではない。
脊髄は老化による変形や損傷があり、交通事故後に脊髄損傷が見られても、交通事故に起因するものと認められず、診断が下りない事がある。そのような場合には交通事故に精通した弁護士に相談した方が良い。
交通事故が原因で脊髄損傷を負った場合、精度の高いMRI画像を撮影する、神経学的検査を受けるなどして、納得のいく後遺障害等級を認めてもらうべきである。
脊髄損傷になったら、精度の高いMRI画像を撮影する、神経学的検査を受けるなどして後遺障害診断書に添付する証拠を集め、納得のいく後遺障害等級を認めてもらうのが望ましい。
レントゲンやMRIなどの画像所見がない場合、医師が脊髄損傷と診断していても裁判所が認めない場合もあるため、裁判をする場合には事前に弁護士に相談をした方が良い。