5段階に分けられる脊髄損傷による麻痺の度合い
交通事故で同じ箇所に脊髄損傷を負っても、人によっては交通事故前とほとんど変わらずに生活できる人もいれば、脊髄損傷箇所から下の部位が完全麻痺して、生活に支障がある人まで幅広くいます。
脊髄損傷には脊髄が完全に分断される「完全損傷」と一部が損傷する「部分損傷(不完全損傷)」があります。
脊髄の太さは一定ではなく、頸部は割り箸1本ほどの細さで、腰部にいくほど太くなり指1本分の太さになっている人がほとんどです。
その直径1㎝ほどの脊髄でも損傷箇所によりどこに障害が出やすいか医学的には判明しているため、
「第三胸椎の右側腰寄りの部分脊髄損傷だから、麻痺などの症状が出るのは、ここらへん」と、医師などは麻痺や感覚異常が出る箇所を予想できます。
しかしながら、麻痺や感覚異常が出るであろう箇所は予測できても、どの程度の症状なのかは不完全脊髄損傷の場合、予想よりも大きな振れ幅が出ることがあります。
軽いしびれ程度の麻痺を予想していたが完全に動かなかったり、反対に腕はほとんど動かないと考えていたが、フォークを使って自分で食事できるくらいの生活機能を有していたというようなことがあります。
麻痺の度合いは5段階に分けられる
脊髄損傷による麻痺の度合いの分類にはいくつかの判断基準があるのですが、フランケル分類基準ではA~Eまでの5段階があり、Aが完全麻痺、Eが麻痺なしの正常となっています。
具体的には、
A:Complete〔完全麻痺〕:損傷部位以下の運動知覚の完全麻痺。
B:Sensory only〔運動喪失〕:運動完全麻痺で、知覚(痛みや温冷感・触感)のみある。
C:Motor useless〔運動不全〕:損傷部位以下の筋力は残存しているが、実用性が乏しい。
D:Motor useful〔運動あり〕:損傷部位以下の筋力に実用性がある。杖や歩行補助具使う使わないに関わらず歩行可能な状態である。
E:Recovery〔回復〕:筋力の低下はなく、知覚障害もない。膀胱直腸障害も認めない。
になります。
交通事故による脊髄損傷では、「後遺症がどれだけ残っている」というのが、示談金額の大きな要因となるため、同じ箇所の脊髄損傷でもAの判断ならば、重大な後遺障害として後遺障害慰謝料や将来的な介護費用の請求を考慮しなければいけません。
しかし、E判定ならば後遺障害自体ないのですから、後遺障害慰謝料の支払いはありません。
脊髄損傷は一度損傷すると治らない怪我ではありますが、リハビリなどによっては症状が大幅に改善することもあるため、症状固定や示談のタイミングが非常に重要と言えます。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
脊髄損傷の診断は麻痺、しびれの確認、MRI等の画像診断で特定し、損傷箇所は、C・T・L・Sで部分を、番号で骨の場所を表す。ダメージの度合いは完全損傷と不完全損傷に分かれる。
脊髄損傷となった場合、体の傷が治癒し始めると早急にリハビリ計画が立てられ、リハビリをしていくことになる。麻痺をした部分であってもリハビリテーションの有用性がある。
交通事故で負った脊髄損傷の後遺障害等級は完全損傷か不完全損傷かが大きく影響する。自賠責基準と弁護士基準では金額差が大きいため、弁護士に依頼すべきである。
交通事故で脊髄損傷となった場合でも、運転免許試験場(運転免許センター)で適性検査を受けて審査に通れば、運転免許証を取得することができる。
交通事故で脊髄損傷となり、脊髄損傷の知識を得たい場合には、信頼のおける発信源から、新しい情報を収集することが大切である。