交通事故の治療に健康保険を使って欲しいと保険会社から言われ・・・
【質問】
1週間ほど前に、横断歩道を横断中に交通事故に遭い、腰などに打撲傷を負いました。
青信号で渡っており、相手の信号の見落としであったため、過失は0です。
しかし、交通事故直後に連絡してきた加害者側の保険会社が、「健康保険を使って、治療してくれませんか?健康保険で治療をしてもらえたのならば、いろいろと融通します」と電話してきました。
交通事故だと健康保険は使えないと聞いたことがあり、何より健康保険を使って診察を受けると3割負担のため一時的とはいえ金銭的な負担が生じますし、何より怪しかったので即答で断り電話を切りました。
「被害者側の健康保険を使わそうなんて、とんでもない保険会社だ」と思い、保険会社からの電話は留守電にして、それから直接話していません。
非常識な申し出だと思うのですが、これから先も治療が必要ですし、保険会社とどう交渉したらいいのかわかりません。
【回答】
「交通事故だと健康保険を使って治療できない」と言う事を聞きますが、実はこれ自体が間違いです。
交通事故であっても健康保険組合に届け出さえすれば、健康保険を利用して治療することができます。
そのため、ひき逃げなどで加害者が分からない場合でも、届け出さえすれば利用できるため、場合によっては健康保険を使うのは有効です。
健康保険を使って交通事故の治療を受けた場合には、自己負担分や健康保険組合が負担した分は、加害者に請求します。
加害者が自動車保険に加入しているのならば、その保険会社が加害者の代わりとなって被害者や健康保険組合に支払うことになります。
「では、健康保険を使っても使わなくても、保険会社が治療費を支払わなければならないのだから一緒なのでは?」と思われるかもしれませんが、実は健康保険を利用することで治療費自体が大きく変わってきます。
健康保険を利用した場合には保険適用の治療のみになりますが、健康保険を使わないと自由診療とみなされ、同じような治療であっても2倍・3倍の治療費になります。
そのため、自賠責保険や保険会社が用意している補償枠が治療費により大きく削られてしまい、結果的に被害者に支払う補償金が減額する可能性があります。
たとえば、交通事故による打撲で、補償金額合計が200万円が妥当なケースだとします。
怪我の治療費が健康保険を使ったのならば50万円、使わなかったのならば100万円かかったとすると、被害者に支払う補償金は健康保険を使ったのならば150万円、使っていないのならば100万円と、治療費の差がそのまま補償金額の差となる事があるのです。
今回のケースでは、保険会社の説明不足であったかもしれませんが、被害者が有利な内容で、「融通をはかる」と言う発言からも、ある意味被害者を思っての対応だったと言えます。
次回保険会社から連絡があった時には、健康保険を使っての治療の説明をよく聞き、納得できるのであれば、健康保険を使うのも良いと言えます。
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第三者行為の届出をすれば、交通事故による怪我でも健康保険を利用しての治療が受けられ、病院によっては治療費を直接保険会社に請求するため、治療を受けた当事者には請求がされないケースもある。
交通事故が原因の怪我で仕事ができず、生活費に困ってしまう場合がある。その時は休業損害を請求したり、労災保険や健康保険を利用したりして、経済的な補償を受けると良い。
交通事故の治療費は、過失割合によってはいったん自己負担した後、示談時に清算されることがある。その場合負担が大きいため、健康保険や高額医療費制度を活用すると良い。
交通事故でひき逃げに遭った場合、加害者が明白の場合とは違い、保険会社とのやりとりができない。場合によっては政府保障事業制度を利用するなど、被害者の救済措置を利用する方法がある。
交通事故の被害者が交通事故以外の原因で死亡した場合には、加害者は死亡日までを補償すればよい。