名義変更前の自動車での交通事故の場合、誰の責任になる?
【質問】
新車から8年乗っていた自動車を買い替える際に、その自動車を友人に有償で譲ることにしました。
加入していた自動車保険は新しい自動車に乗せ換える形にして、自賠責保険料込で30万円を現金で支払った友人に、自動車や自賠責保険の名義変更のために必要な書類をつけて、自動車を引き渡しました。
しかし1カ月後、友人がその自動車で交通事故を起こし、相手も友人も入院したと聞きました。
見舞いに入院している病院に行ったところ、友人から名義変更をまだしていなかったことを告げられました。
仕事が忙しく平日に休みが取れなかったので、陸運局や保険会社に行くことができず、ずるずると名義変更をせずに、会社の通勤で毎日使っていたそうです。
そのため、警察による交通事故の調書にも自動車の所有者として私の名前や住所が記載され、自賠責保険の加入確認欄にも私の名前が載ってしまっているそうです。
友人にはきつく抗議しましたが、警察の調書は代えられないということで、もしかしたら交通事故の連帯責任をとらなければいけないのではないかと、不安で仕方がありません。
もし、相手方から友人が治療費を支払わないので治療費を支払ってほしいと言われたら、支払わなければいけないのでしょうか?
その際には、私名義の自賠責保険から治療費を支払うことは可能なのでしょうか?
【回答】
自動車の譲渡と名義変更に時間差があるというのはよくあることです。
中古自動車販売店などでは、1週間に一度・1カ月に一度など、まとめて名義変更の手続きを取るところもあるため、タイムラグが生じることもあります。
先に結論を言うと、自動車の運転手と車両運行責任の関係がない場合には、名義人に交通事故の損害賠償責任は生じません。
マイカーローンで購入された車の所有者は、ローンの返済が終わるまではローン会社の名前になっています。
もし、そういった自動車が交通事故を起こした際に、ローン会社にまで損害賠償責任を科された場合には、ローン会社は圧倒的に不利となるため、判例でもローン会社への損害賠償請求を認めていません。
一部の例外はありますが、今回のケースでは代金を一括で支払い、譲渡書類も揃えて友人に渡しているので、「完全譲渡」としてみなされると判断でき、相手方は請求できないものと思います。
では、友人は全て自腹で相手方に損害賠償をしなければいけないかというと、そうではありません。
自賠責保険は被害者保護の理念があるため、契約者ではなく契約車両と保険契約をしているという感じで、極端に言えば自賠責保険の名義人が、自動車の所有者でも運転手でもない第三者であっても、被害者は契約車両の自賠責保険に対して請求することができます。
加害者においても同様で、被害者に治療費を自腹で支払った後で、領収書などを添えて自賠責保険に請求をすれば、自賠責保険の上限までは保険金の支払いを受けることができます。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
交通事故の怪我が原因で入院した場合、被害者は個室を希望される場合が多い。しかし過去の判例からすると、そのほとんどは個室料金の請求が認められていない。
交通事故の場合、過失割合に沿ってお互いがお互いの損害賠償をしなければいけないため、過失割合が小さくても負担が大きい時がある。
交通事故を起こした車が名義貸しであった場合、運転手以外に、名義を貸していた所有者にも運行供用者責任が課せられるケースがある。
交通事故の示談を弁護士に依頼している場合には、裁判となった場合でも弁護士に任せて出廷しないことも可能である。
交通事故の治療で通う整骨院を転院しても大丈夫だが、担当医や加害者側の保険会社へあらかじめ報告しておかなくてはならない。転院を繰り返すと、治療の一貫性が認められなくなるので注意する必要がある。