自動車との接触がない交通事故でも、損害賠償請求できる?
【質問】
片道2車線の道路を走行中に、脇道から急に飛び出してきた自動車を避けるためにハンドルを右に切ったところ、右側の追い越し車線を走行中の自動車と接触しました。
警察にはすぐに通報して、私と接触した自動車の運転手は事情聴取を受けたのですが、脇道から飛び出してきた自動車の運転手は、そのまま逃走してしまいました。
私の自動車にドライブレコーダーがついていたおかげで、逃げた自動車のナンバープレートがすぐ分かり、顔もはっきりと映っていたため運転手もすぐに警察が見つけてくれました。
ドライブレコーダーの映像から、逃げた運転手は一時停止義務違反とスピード超過を警察から指摘され、それについては、しぶしぶ認めました。
私が右にハンドルを切らなければ、飛び出した車と衝突していましたし、右に切ったおかげで私の方は軽い接触程度の事故で済んでいます。
しかし、自分の自動車が接触していないことを理由に、交通事故の責任を認めようとせず困っています。
このように自動車同士が接触はしていないが、別の事故の原因を引き起こした場合には、相手に損害賠償請求をすることができないのでしょうか?
【回答】
交通事故の多くは、運転手などの当事者による過失から引き起こされます。
過失という原因があって交通事故という結果があるということを、因果関係(もしくは相当因果関係)と言います。
今回の交通事故の場合、「質問者がハンドルを右に切ったがために、追い越し車線を走行中の自動車と接触事故を起こした」というものですが、そもそも「急に脇道から一旦停止無視をした自動車が飛び出してきた」という交通事故を誘発する原因から起きた「誘因事故」であるため、一般的な運転手に過失がある自過失事故とは違ってきます。
逃げた運転手は、一時停止義務違反やスピード違反で安全運転義務を果たしていたと言えず、また、事故の起因となったにもかかわらず警察に通報せずに逃走していますので、人身事故であった場合には通報義務違反・救護違反のひき逃げに当たる可能性もあります。
しかしなから、質問者様本人にもスピードの超過等の過失があったり、右にハンドルを切るのではなく急ブレーキで回避できた可能性が高かったりした場合には、過剰回避行動となり、過失割合が大きくなる可能性もあります。
このような自動車同士の接触がない交通事故では、因果関係の証明が難しい場合もありますので、交通事故に精通した弁護士に相談をする方が良いでしょう。
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交通事故における損害賠償の請求には時効が存在し、規定の期間を経過してしまうと被害者の請求権が失われる。しかし、ひき逃げなどの特殊なケースにおいては、通常の時効とは期間が異なる。
ひき逃げのような悪質な交通事故では、その事実を証明できれば慰謝料を増額する交渉は可能である。弁護士基準での増額の交渉を個人で行うのは難しいので、弁護士の知恵を借りるべきである。
交通事故の損害賠償金が少なくて弁護士に依頼をためらっている場合には、弁護士費用特約に加入しているか確認をしたり、少額訴訟を検討してみると良い。
仮に交通事故の示談交渉を弁護士に任せたとしても、保険会社と交渉する場に、被害者が同席する事は可能である。しかし、その場合にはスムーズに事を進めるために入念な打ち合わせが求められる。
交通事故で主張が食い違う場合、警察の実況見分調書や写真、撮影画像などで状況を客観的に証明して相手に認めさせれば、正当な過失割合での賠償金を受け取ることができる。