死亡事故で労災認定を受けた場合の保険金はどうなる?
死亡事故が起こるのは、休日のドライブや買い物途中など、プライベートな時間に起こるとは限りません。
会社勤めの人ならば、むしろ通勤途中や勤務時間内の配達や営業中に、死亡事故に巻き込まれるといったことが起こります。
その際に問題となるのが、「労災」として認められるかということです。
勤務時間内であれば労災認定がされますが、通勤中に死亡事故に遭った場合は問題となることもあります。
ほとんどの場合で労災と認められるのですが、「会社が自家用車での通勤を許可しておらず、公共交通機関を使った場合の交通費を毎月受け取っていた」「営業時間外での社有車の使用を禁止しており、社有車のカギを金庫に入れていたにもかかわらず、無断で開錠して死亡事故に遭った」というような場合は、労災として認められるかというと議論が分かれます。
労災は「労働者の権利保護」、自賠責保険は「交通被害者の救済」という基本理念があるため、どちらかというと労働者に有利な判決が出ることが多いです。
労災を使った方が得になることも
交通死亡事故の場合は、自賠責保険及び加入している保険会社から保険金がおりるのですが、労災認定を受けている場合には労災を利用することができます。
基本的に自賠責保険や保険会社からの保険金と、労災からの給付金の2重受け取りはできません。
例えば休業補償に関しては、労災からは給与の80%が最大支給されますが、保険会社は実際の給与金額になります。
これだけ見ると、両方から受け取り給与の1.8倍受け取れるように思えますが、実際には労災から80%を受け取り、残りの20%を保険会社から受け取ることになります。
こうしてみると、「保険会社と労災どちらからもらっても、金額に差がない場合には、どっちでもいいのでは?」と思うかもしれませんが、大きな差が生じることがあります。
交通事故の場合、「過失相殺」というものがあります。
自損事故ならば100%、自動車などの相手がいる場合には0~100%の間で過失があります。
過失が100%ならば治療費などは全て自己負担となりますし、過失が30%ならば70%しか支払ってもらえないということになります。(自賠責の規定を除く)
例えば、交通事故で1カ月入院した後に死亡して、治療費が200万円かかったとします。
過失が30%ならば、保険会社からは140万円が支払われますが、60万円は遺族が支払わなければいけません。
しかし、労災認定された場合には、治療費は過失に関係なく全額労災から支払われます。
労災は、治療費以外も死亡事故の過失割合に関わらず、実費もしくは既定の金額を支払いますので、過失割合が大きいほど、労災を利用した方が受け取れる保険金の合計が大きくなる可能性があります。
ですが、労災の関係は複雑であったりしますので、弁護士に相談して労災との併用をしつつ保険会社に請求をした方が良いでしょう。
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保険会社が提示する損害賠償金額は、自賠責基準とほとんど差がない。死亡事故の場合の自賠責基準と弁護士基準について見てみると基準額の決め方が異なり、数百~一千万円以上の差が出る可能性がある。
介護人が死亡事故に遭うと、被介護人の処遇が問題となるが、保険会社からの介護料の補填はないので、通常の保険金で被介護人の処遇を考える必要がある。
交通死亡事故で相手側の損害保険会社と交渉する場合、冷静さを保ち話し合う必要があるが、それが無理だと感じたら弁護士に依頼をした方が良い。
死亡事故で弁護士を雇う利点は、公的な手続きを代行してもらえる、加害者側の交渉を任せられるので直接会わずに済む、保険会社と交渉して保険金の増額が望めるなどがある。
死亡事故の賠償金を受け取る人は、亡くなった被害者から賠償請求権を相続した相続人である。死亡事故により相続が発生したら、弁護士に相談することが望ましい。