遷延性意識障害となったのに逸失利益がもらえない?!
交通事故が原因で遷延性意識障害となった場合には、労働能力喪失率が100%なので、逸失利益は年収の全額が認めてもらえることが多いです。
しかし何事にも例外があり、遷延性意識障害でも逸失利益が認められないケースもあります。
ここでは遷延性意識障害でも逸失利益が認められない、もしくは減額されるケースを説明していきます。
1.家賃収入や株式配当が収入であった者
家賃や株式配当は、遷延性意識障害患者が働いて生み出した利益ではなく、患者が保有する株や不動産によって生み出されるものです。
つまり、遷延性意識障害となっても変わらずに収入が得られるため、逸失利益が認められません。
賃貸アパートのメンテナンスを遷延性意識障害患者自身が行っていたという場合には、逸失利益が一部認められるケースもあります
2.会社役員
意外に思われるかもしれませんが、会社役員も逸失利益が認められません。
会社の従業員は労働の対価として給与をもらっているという給与所得者の立場なのですが、会社役員は役員の地位にあること自体に対する報酬や利益配当等による収入となるため、いわゆる不労所得者となるからです。
しかし、中小企業などでは役員とは名ばかりで、実際には業務に従事していて、役員としての報酬の意味が薄いといった場合もあります。
判例では役員であっても収入の全額もしくは一部を給与として認め、逸失利益を支払うように命じたものもありますので、そのような場合には弁護士に相談した方が良いでしょう。
見解が難しいケース
3.無職者
交通事故当時無職の場合は、給与がないのですから逸失利益はないと、保険会社は計算します。
しかし、同じ無職であっても、「親の遺産などがあって働かなくていい」「転職先が決まっていて、次の就職までの待機期間であった」「病気療養中であったが、完治した後は再就職活動を予定していた」とでは、大きな違いがあります。
親の遺産で生活していた場合には、完全なる無職者であるため、逸失利益は認められません。
逆に再就職先が決まっていた場合には、そこの会社の給与に準ずる計算での逸失利益となることが多いです。
一番厄介なのが、就職活動を予定していた場合です。
本人が遷延性意識障害になる前に再就職を希望していても、客観的に年齢や健康状態などから裁判所が再就職は困難と判断すれば、無職者として取り扱われます。
反対に年齢が若かったり、技術者で再就職が容易であると推測される場合などには、同年齢、同学歴の平均年収を参考に逸失利益が計算されます。
このケースでは逸失利益に関して、加害者や加害者側の保険会社と係争が起こることが容易に想像できるため、示談前に弁護士に相談した方が良いでしょう。
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交通事故の遷延性意識障害の示談の場合、示談のタイミングが難しいのと示談金額の交渉が難しいため、弁護士に任せた方が良い。
遷延性意識障害となり損害賠償請求をする場合に、遷延性意識障害患者の生活費控除が認められると賠償金が減るため、不当な計算方法で賠償金が減らないように弁護士と相談する方が良い。
専業主婦が交通事故により遷延性意識障害となったケースでも逸失利益等は認められ、交通事故以前に家族の養育や介護をしていた場合には、その家族の養育費用や介護費用を請求できることもある。
交通事故の示談交渉で保険会社から遷延性意識障害患者の余命は10年ほどとの主張がなされる時があるが、裁判所は平均余命を採用している。
家計の中心である人が遷延性意識障害となると、患者家族の生活費がなくなり困窮することがある。そのような場合には仮渡金の請求を加害者側にするとよい。